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査定2 惨殺アイちゃん参上【解答編】

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 みんなの注目が集まるなか、クラシックカーから男が降りてくる。顔までは良く見えないが長身であり、また髪の毛をオールバックにしているのが分かった。

「や、これはギリギリ間に合った感じですかね?」

 長身の男は千早のほうへと視線をやると、車のドアを閉めた。

「予定の時刻より5分ほど遅刻ですが――」

 千早がそう言うと、一里之の気持ちを代弁するかのごとく愛がぽつりと口を開いた。

「あの、知り合いの人かなにか?」

 小声で聞いた愛に対して、ごくごく普通の音量で返す千早。それは実にわざとらしく見えた。

「はい、知り合いの刑事さんです」

 別に悪いことなんてしていないのに、刑事という言葉を聞いただけで妙に緊張してしまう一里之。というか、知り合いに刑事がいるとか、千早の人脈はどうなっているのだろうか。

「どうもみなさん。私、妻有警察署の捜査一課に所属しております、斑目と申します」

 辺りが暗いというのに、おそらく警察手帳を取り出したのであろう。手元にそれらしきシルエットを見せる班目。リアクションがはっきりと見えるのは、玄関の明かりまで点けた【惨殺アイちゃん】のみ。その反応は、これまでの余裕ありげな態度から一転。明らかに焦っているようだった。

「さてさて、お願いされていた件ですが、おおむねでご希望通りになりましたよ。まず、雛撫高校側には、あくまでも事を大きくしないということを約束した上で、被害届を出していただきました。実際に現場を見せてもらいましたが、かなりの数のウサギがやられたみたいですからね。学校としても、世間体さえ悪くなければ、いくらでも被害届を出したいって感じでしたよ」

 班目と名乗った刑事は、そう言うと茶封筒らしきものを掲げる。きっと、その中に被害届が入っているのだろう。しかしながら、警察のほうから被害届を出すようにアプローチするなんてことは、特別な理由がなければあり得ないのではないだろうか。そんなことを現職の刑事に頼むなんて――千早と班目はどういった関係なのだろうか。

「で、実はすでに被害届は受理されてましてね。えっと、河合かわいあさおさん……あぁ、河合かわあいあさおさんと読むのか。これは失礼。ちょっと署で詳しくお話を伺いたいのですが、ご足労願えませんかね?」

 これは【惨殺アイちゃん】にとって予想外の出来事だったのであろう。器物損壊罪は軽犯罪になるのだろうが、まさか学校がしっかりと被害届を出し、また刑事が直々にお迎えに上がるなんて思いもしなかったに違いない。
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