猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定2 惨殺アイちゃん参上【解答編】

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 一里之の知っている猫屋敷からは想像できないようなキツイ言葉が連ねられる。彼女と深く関わったことがなく、勝手にイメージだけが先行していたせいか、遠慮なく相手の懐に飛び込もうとする言動には驚かされる。大体、男の一里之でさえ、動物を殺した犯人に多少はビビっているというのに、千早は物怖じせずに前へ出ようとする。きっと、クラスメイトがこの姿を見たら、誰もがギャップを感じることだろう。おしとやかなお嬢様がストーリーファイトで大男にシャイニングウィザードをお見舞いするような感じ――とはまた違うか。

「査定ポイントのふたつめ。実は今回の事件で特筆すべきポイントというのはふたつしかありません。そして、なによりもこのふたつめのポイントが重要になってきます。それは――風紀委員会です」

 おそらく、この場にいる誰もが、風紀委員会と犯人を結びつけられずにいるのだろう。学校に同行していない一里之であるが、風紀委員会が事件の決定打になるとは思えない。

「風紀委員会は今回の事件のことを解決しようと躍起やっきになっていました。そのやり方は感心できませんが、学校の風紀を守らねばならないという想いが暴走してしまったのでしょうね。その結果、風紀委員会はある意味、学校内でも有名になりました」

 千早がどこから真相へたどり着こうとしているのか。愛も分からないようで、一里之のほうに意見を求めるかのごとく視線をやってくる。一里之は首を大きく横に振った。同行していた愛が分からないのに、ずっと外で待っていた一里之が分かるはずがない。

「――ちょっと待て。そう言えば風紀委員会が総出で探し回っていた生徒がいたじゃないか。ほら、バスケットボール部の人間で、ゴールデンウイーク中も毎日のように学校に来ていた生徒が」

 風紀委員会というワードから何かを連想したのか、話を急に切り替えてくる【惨殺アイちゃん】こと河合あさお――面倒なので、おっさんという呼び方で固定させていただくことにする。

「長谷川愛美さんのことですね? 確かに、彼女の行動には奇妙な点がありました。ゴールデンウィーク中、部活動がない時でも学校に来ていたし、ウサギ小屋での事件が発生した途端、ぱったりと学校に来なくなってしまった。本当ならば、ご本人に会って確認をしたかったのですが、ここは私の推測で補わせていただきます」

 そこで浅く呼吸を繰り返すと、改めておっさんのほうを向く千早。

「もしかすると彼女は――ウサギ達を守るためにゴールデンウィーク中も毎日学校に通っていたのではないでしょうか?」
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