猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定2 惨殺アイちゃん参上【解答編】

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 古物商――百歩譲ってそれはいいとして、その古物商がどうして自分のところへとやってきたのであろうか。そもそも古物商に知り合いなどいないのだが。

「あの、根本的なことをお尋ねしてもいいですか?」

 できる限り下手に出つつ問う。いきなり訪ねてきたセーラー服姿の古物商と【惨殺アイちゃん】による扉越しのやり取りは続く。

「はい、どうぞ――」

「どうしてこちらに報告に来てくださったのですか?」

 あちらの調子に合わせ、こちらも丁寧な言葉遣いを徹底する。それはもしかすると残虐な【惨殺アイちゃん】のイメージを払拭するためのものだったのかもしれない。

「それはもちろん、クライアントからお持ちいただいた品物が、あなたに深く関与しているからです。むしろ、あの品のいわくは、あなたが作り出したと言っても過言ではないでしょう。そうですよね? 【惨殺アイちゃん】――」

 その一言が妙に冷たくて、背筋がゾクリとした。これまで【惨殺アイちゃん】は誰かに自分の犯行を誇示したくて仕方がなかった。その願いは叶い、学校は大騒ぎとなり、一躍【惨殺アイちゃん】は有名人となった。有名になる分には全く構わないし、自己顕示欲を満たせるのであれば、どんどん自分のやったことを誇示したいと思っている。ただし、事件の犯人として暴かれるとなると話は違った。そんな惨めな姿は、超有名人になった【惨殺アイちゃん】には許されないことだ。

「な、何を言っているのか良く分かりませんね……」

「ですから、あなたこそが【惨殺アイちゃん】であると私は言っているんです」

 こちらがとぼけようとしたそばから、間髪入れずに言葉をかぶせてくる古物商。正体がばれるなんてことがあってはならない。あくまでも【惨殺アイちゃん】は謎の人物であり、その正体も不明でなければならないのだ。それなのに、それなのに――扉の向こうの古物商は容赦なく自分のことを【惨殺アイちゃん】呼ばわりする。

「あのですね。あまり適当なことばかり言ってると――警察呼びますよ」

「適当ではありません。明確な根拠があるからこそ、こうしてお邪魔させていただいたのです。それに、警察を呼びたいのならばご自由にどうぞ。困るのは私ではなくあなたですから」

 こちらが少し強気に返すと、あちらも相反するかのごとく強気に出てくる。らちがあかないと考えた【惨殺アイちゃん】は、相手の根拠とやらを聞いてやることにした。なぜなら、その根拠を現時点で覆すことのできる手段を見つけていたからだ。ここは変に追い返したり否定したりしないで、素直に招き入れてやればいい。もし最悪の場合は――【惨殺アイちゃん】は部屋の片隅に立てかけてある、ボウガンを収納したバッグを一瞥した。
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