猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定2 惨殺アイちゃん参上【問題編】

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「ちょっと先に職員室に行くね!」

 詰所を飛び出した後でも、千早がスカートを気にしているのが見えたのであろう。愛はそう言うと廊下の奥へと向かって駆け出した。下校時間を過ぎてしまうと、きっと学校に残るのも難しくなるだろう。

「あ、は、はい!」

 先の廊下を折れ曲がる愛の背中を見送りつつも、千早はやはりスカートが気になって上手く走れない。その時である。千早の脳内に閃光が走り、これまで気づかなかったのが不思議なほど、当たり前の事実に気づいてしまう。

「――もしかして、これって家にあるショートスパッツを下に履けば良かっただけなのでは?」

 誰に言うでもなく呟くと、大きく溜め息を漏らした。スカートの下にショートスパッツを履けば、そこまで不自然な形にはならないだろうし、なによりもスカートがどれだけ動いても気にならない。見えるのはパンツではなくスパッツなのだから、仮に誰かに見られても恥ずかしくない。こんな当たり前のことに、どうして今まで気づかなかったのか。なんだか恥ずかしくなり、誰もいない廊下で取り繕うための咳払いをした。

「なんなんだ! こんな下校時刻ギリギリになって!」

 廊下の向こう側から男性の声が聞こえて来たと思ったら、今度は愛の声が聞こえてくる。

「堺先生にちょっと話を聞きたいんです! 先生の引き出しの中にあった、血まみれのカッターについて!」

 折れ曲がった廊下の向こうで、愛が無理矢理に堺先生の腕を引っ張っている姿が想像できる。

「あ、赤祖父っ! あれを盗ったのはお前だったのか! 返せ! 今すぐにだ!」

「盗ったんじゃなくて借りたんです! 事情を聞いたら返しますから!」

 押し問答しながらも、想像通りの格好で赤いベストを来た中年の男性と愛が現れた。話の流れから考えても、愛が腕を引っ張って連れてきた男性が堺先生なのであろう。

 千早は愛と堺の元へと奇妙なステップで駆け寄ると、不思議そうな顔をする堺に頭を下げる。はて――こんな生徒がいただろうか。という疑問と、なぜこの子は奇妙なステップ踏んだのであろうか。という疑問が混ぜ合わさったような表情だった。

「あの、私2年生の猫屋敷千早と申します。そこまでお時間はとらせませんので、私の質問に答えてくださると幸いです」

 回りくどいことは一切せず、ここはいきなり本題を切り出すしかない。千早の推測が正しければ、堺の証言次第で犯人――【惨殺アイちゃん】の正体が分かるはず。だから、ダイレクトに疑問を堺にぶつけてやった。

「単刀直入にお聞きします。なぜ、凶器になったであろうカッターナイフを持ち去ったのですか? 実は私、現時点で堺先生が【惨殺アイちゃん】なのではないかと疑っているのですが」
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