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査定2 惨殺アイちゃん参上【問題編】

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「あー、そうなのかい。あの子らときたら、正直なところやりたい放題でね。何度も押しかけてきては、名簿を見せろと上からものを言ってくる。いや、すまないね。てっきりまた風紀委員会が来たのだとばかり思ったものだから、不適切な対応をしてしまったよ」

 不適切な対応とは、不機嫌そうに溜め息をついたことなのであろう。風紀委員会がどんなやり方をしているのかは分からないが、愛の話だと魔女裁判じみたことまで学校側に進言しているようだし、随分と強行手段に出ているようだ。時として、振りかざされた正義は人を傷つける。本人達は正義の下に行っていることだから感覚が麻痺してしまっているのだろうが、正義感が人を殺すことなんて世の中にはざらにある。間違った正義ほど恐ろしいものはない。それがこの学校にも蔓延まんえんしつつあるようだ。

「いえいえ、警備員さんも大変ですよね――」

「あの、5月4日の名簿を見せていただきたいのですが」

 愛と警備員の間に割って入るかのごとく口を開く千早。正直なところスカートが気になって仕方がないし、余計なやり取りはできる限り省きたい。ただでさえやることが馬鹿みたいにあるのだから。

「あー、5月4日の名簿ねぇ」

 会話に割り込んできた千早に面くらった様子を見せると、そう呟き落とす警備員。ふと、胸元につけられた名札が目に入った。プラスティック製であろう名札には【河合(あ)】と書かれている。このような名札の書き方をされるのは、同姓の人間が身近にいる時だ。もしかすると警備員にはもう一人の河合さんがいるのかもしれない。

「言っておくけど持ち出しとかはできないからね。ここで見る分にはいいけど」

 そう言って小窓から離れる警備員の河合さん。察するに、過去に持ち出そうとした人間がいたのだろう。考えるまでもなく風紀委員会なのであろうが。

「はい、これが5月4日の名簿。この日は確か、いつもより学校にくる生徒が少なかったような気がするなぁ。動いていた部活動はバスケットボール部くらいだった気がするし」

 小窓の向こうに広げられた名簿。思ったよりも署名の数が少なかった。バスケットボール部も、そこまで大所帯ではないらしい。もし膨大な数であったら、警備員の目を盗み、スマートフォンで撮影しなければならないと考えていたのであるが、署名の少なさは好都合である。これならば犯人を絞り込むのにも時間はかからないだろう。もっとも、その分、愛への嫌疑も深まってしまう。千早は彼女がそんなことをするような人ではないと思っているが、魔女狩りを粛々しゅくしゅくと進めようとする学校の雰囲気は、数少ない容疑者を許さないだろう。だからこそ、愛は同じクラスの動物係と一緒に不遇な扱いを受けているのだ。
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