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査定2 惨殺アイちゃん参上【問題編】
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「あ、いや――なんというか」
千早の問いかけに対して、一里之は愛をちらりと見やった後、明らかに目を泳がせる。その反応はどのように解釈していいのか分からない。しばらくすると、一里之は覚悟を決めたかのように頷いた。
「その、基本的に男子は女子のパンツを見たい生き物だ。例えそれが猫屋敷でなくともな」
いや、決まった――みたいな感じて格好をつけられても困る。こちらの質問に対しての答えになっていないではないか。男子の習性を聞きたいのではなく、クラスの男子の目が自分に対してどのように向けられているのかを確認したいだけであり、一里之の答えは若干ずれている。思わず、そこを追求しようとしたところで、一里之がぽつりと続けた。
「まぁ、猫屋敷の黒タイツは――ある層からは大変貴重がられている。うちの高校、あんまりいないからな。黒タイツ女子。しかも、スカート短めの」
「――なっ!」
カウンター越しで一里之には見えていないだろうが、思わずスカートの裾を手でおさえる千早。クラスの女子はみんなスカートが短いし、だからこそ自分のスカートの長さはギリギリで許容範囲だったのであるが、どうやらその考え方自体が間違っていたらしい。これはもはや、ジャージを下に履いて登校せざるを得まい。
「まぁまぁ、それだけ男子に注目されるってことだから良いことじゃん。とにかく、貸せるスカートはそれなりに短いと思うけど、そこは我慢してもらうしかないかなぁ」
愛はそう言うと、千早のことをじっと見つめてから続ける。
「うん、絶対にうちの高校の制服似合うって。これも人助けだと思って――ね? 他に良さげな方法もないわけだし」
どうにも気乗りしないのであるが、しかし査定を続けるためには現地での情報収集が必要であるし、他に良い方法が見つからないのも事実。障害なくスムーズに情報を集めたいのであれば、その高校の生徒を偽るのがもっとも簡単で確実であろう。
「――承知しました。では、スカートを拝借するということで」
千早は渋々と受け入れることにした。最悪、下はタイツを履けば良い。そうすればダイレクトに下着が見えることはないわけだし。
「あ、ちなみにうちの高校、変な伝統意識があるのか、タイツ類は禁止だから。それだけはお願いね。タイツなんて履いてたら指導室行きだろうから」
千早の思惑は、愛の一言で早速崩れ去ることになってしまった。もうどうにでもなれ――ある意味で覚悟を決めた千早は、改めて「承知しました……」と力なく呟き落としたのであった。
千早の問いかけに対して、一里之は愛をちらりと見やった後、明らかに目を泳がせる。その反応はどのように解釈していいのか分からない。しばらくすると、一里之は覚悟を決めたかのように頷いた。
「その、基本的に男子は女子のパンツを見たい生き物だ。例えそれが猫屋敷でなくともな」
いや、決まった――みたいな感じて格好をつけられても困る。こちらの質問に対しての答えになっていないではないか。男子の習性を聞きたいのではなく、クラスの男子の目が自分に対してどのように向けられているのかを確認したいだけであり、一里之の答えは若干ずれている。思わず、そこを追求しようとしたところで、一里之がぽつりと続けた。
「まぁ、猫屋敷の黒タイツは――ある層からは大変貴重がられている。うちの高校、あんまりいないからな。黒タイツ女子。しかも、スカート短めの」
「――なっ!」
カウンター越しで一里之には見えていないだろうが、思わずスカートの裾を手でおさえる千早。クラスの女子はみんなスカートが短いし、だからこそ自分のスカートの長さはギリギリで許容範囲だったのであるが、どうやらその考え方自体が間違っていたらしい。これはもはや、ジャージを下に履いて登校せざるを得まい。
「まぁまぁ、それだけ男子に注目されるってことだから良いことじゃん。とにかく、貸せるスカートはそれなりに短いと思うけど、そこは我慢してもらうしかないかなぁ」
愛はそう言うと、千早のことをじっと見つめてから続ける。
「うん、絶対にうちの高校の制服似合うって。これも人助けだと思って――ね? 他に良さげな方法もないわけだし」
どうにも気乗りしないのであるが、しかし査定を続けるためには現地での情報収集が必要であるし、他に良い方法が見つからないのも事実。障害なくスムーズに情報を集めたいのであれば、その高校の生徒を偽るのがもっとも簡単で確実であろう。
「――承知しました。では、スカートを拝借するということで」
千早は渋々と受け入れることにした。最悪、下はタイツを履けば良い。そうすればダイレクトに下着が見えることはないわけだし。
「あ、ちなみにうちの高校、変な伝統意識があるのか、タイツ類は禁止だから。それだけはお願いね。タイツなんて履いてたら指導室行きだろうから」
千早の思惑は、愛の一言で早速崩れ去ることになってしまった。もうどうにでもなれ――ある意味で覚悟を決めた千早は、改めて「承知しました……」と力なく呟き落としたのであった。
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