猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定2 惨殺アイちゃん参上【問題編】

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「確か、休みの日は例外なく、校内に入るためには署名する必要があったはず。その日、署名する時に先生の名前があったのを見た覚えがあるから」

 セキュリティーがしっかりしている学校のようだし、ある程度徹底されているだろうとは思っていたが、どうやら生徒に限らず、校内に入るためには誰であろうとも署名する必要があるようだ。

「となると、5月4日に署名された名簿の中に【惨殺アイちゃん】も含まれていることになるわけですね。ならば、その署名された名簿だけでも見せてもらえば、かなり【惨殺アイちゃん】を絞り込めることになりそうです」

 千早がそう言うと、何か引っかかりを覚えていたのだろうか。一里之がややいぶかしげな表情を浮かべて「ちょっといいか?」と口を開く。それに対して「どうぞ」と譲ると、一里之は続ける。

「なんかさ、名前に【アイ】が入っている奴が犯人――みたいな話になってるけどさ、それって【惨殺アイちゃん】自身がそう書き残しているだけだろう? もしかすると、そのメッセージ自体が、自分から疑いをそらすための嘘ってことはあり得ねぇか」

 犯人の名前には【アイ】という二文字が入っている。それは確かに【惨殺アイちゃん】と思われる人物が書き残したメッセージだ。もちろん、可能性としては一里之が言ったように、自分から疑いの目をそらすために嘘のメッセージを残したということも充分に考えられる。しかし、千早にはある確信があった。

「いえ、嘘である可能性は低いと思います。ここで【惨殺アイちゃん】の手口に注目してみてください。最初はカラスを矢で射るという殺し方をしているようですが、次のタヌキは首を切断するという手段に出ています。そして、ウサギにいたっては現場が血の海になるほどの虐殺を行っている。それにくわえて、カラスは正面玄関脇、タヌキは校門ですが、ウサギに関しては、わざわざ休日に署名を残して校内へと入り、学校関係者しか持っていないというカッターナイフで犯行に及んだ可能性が極めて高い。これらのことを総合して考えると、確実に言えることがひとつだけ浮かび上がってきます。それは――」

 千早はそこで言葉を区切ると、血まみれになったカッターナイフから目を離して顔を上げる。

「事件を重ねるにつれて、確実に【惨殺アイちゃん】はエスカレートしているということです。そしてなによりも自己主張が事件を重ねる度に強くなっています」
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