猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
44 / 226
査定2 惨殺アイちゃん参上【問題編】

13

しおりを挟む
 ゴールデンウイーク中は当然ながら学校も休み。ただ、ゴールデンウイーク中の学校にまるで生徒がいないというわけではなかった。各学年、各クラスにいる、俗に言う動物係はゴールデンウイーク中に持ち回りでウサギの世話をしにやってきていたし、部活動の都合で学校に来ていた生徒もいる。

 そのXデーは5月の4日。たまたま動物係をやらされていた愛が、ウサギの世話をしに行かなければならない日のことだったそうだ。

 いつもより少し遅い時間に家を出て、校門前で同じクラスの動物係と待ち合わせをした。同じクラスの動物係の名前は相崎美穂あいざきみほという子であり、動物係という繋がりがなければ愛と連絡先の交換さえしていなかったかもしれないというレベルの仲の子だった。愛いわく女子しかいないせいか派閥意識が強いのだとか。いやいや、共学でも女子の間にある派閥意識は結構なものだ。その派閥に関わらないようにしている千早が思うのだから間違いない。

 休日の学校は正面玄関が閉まっているため、校舎をぐるりと回った先にある裏口から入ることになる。裏口には警備員の詰所が隣接しており、中に入るには署名をする必要があるのだそう。妻総と違って、随分としっかりしたセキュリティーだ。

 愛と美穂が警備員の詰所前を通過したのが午前10時すぎ。そのまま校舎の中を進んで、ウサギ小屋のある中庭へと向かった。そして愛達は、惨殺されているウサギを発見。真っ赤に染まったウサギ小屋、生き絶えたウサギの死骸。愛と美穂は動転しながらも、手分けをして人を呼ぶことにした。凄惨な現場と化した中庭に1秒たりともいたくなかったそうだ。

 美穂は警備員の詰所のほうへと走り、愛は職員室のほうへと走った。ゴールデンウイークであっても活動している部活動はあるし、まるで先生がいないということはないと考えたすえの判断だった。

 案の定、職員室には先生がいたそうだ。とりあえず事情を先生に話し、一緒に中庭まで来てもらった。この時にいた先生というのが堺昭夫さかいあきおという英語の教師だったそうだ。頭が禿げ上がっていて、生徒を見る目がなんだかいやらしくてキモい――というのは、あくまでも愛の主観ということにしておいてあげたい。

 愛は先生と一緒に、そして美穂はベテランの警備員を連れて、再び中庭で合流を果たした。その際に中庭に接した校舎の窓ガラスに、愛達はメッセージを見つけたのだそう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】共生

ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。 ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。 隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?

ミノタウロスの森とアリアドネの嘘

鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。  新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。  現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。  過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。  ――アリアドネは嘘をつく。 (過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)

カフェ・シュガーパインの事件簿

山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。 個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。 だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

ハイブリッド・ブレイン

青木ぬかり
ミステリー
「人とアリ、命の永さは同じだよ。……たぶん」  14歳女子の死、その理由に迫る物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ロンダリングプリンセス―事故物件住みます令嬢―

鬼霧宗作
ミステリー
 窓辺野コトリは、窓辺野不動産の社長令嬢である。誰もが羨む悠々自適な生活を送っていた彼女には、ちょっとだけ――ほんのちょっとだけ、人がドン引きしてしまうような趣味があった。  事故物件に異常なほどの執着――いや、愛着をみせること。むしろ、性的興奮さえ抱いているのかもしれない。  不動産会社の令嬢という立場を利用して、事故物件を転々とする彼女は、いつしか【ロンダリングプリンセス】と呼ばれるようになり――。  これは、事故物件を心から愛する、ちょっとだけ趣味の歪んだ御令嬢と、それを取り巻く個性豊かな面々の物語。  ※本作品は他作品【猫屋敷古物商店の事件台帳】の精神的続編となります。本作から読んでいただいても問題ありませんが、前作からお読みいただくとなおお楽しみいただけるかと思います。

消えた弟

ぷりん
ミステリー
田舎で育った年の離れた兄弟2人。父親と母親と4人で仲良く暮らしていたが、ある日弟が行方不明に。しかし父親は何故か警察を嫌い頼ろうとしない。 大事な弟を探そうと、1人で孤軍奮闘していた兄はある不可思議な点に気付き始める。 果たして消えた弟はどこへ行ったのか。

伏線回収の夏

影山姫子
ミステリー
ある年の夏。俺は15年ぶりにT県N市にある古い屋敷を訪れた。大学時代のクラスメイトだった岡滝利奈の招きだった。屋敷で不審な事件が頻発しているのだという。かつての同級生の事故死。密室から消えた犯人。アトリエにナイフで刻まれた無数のX。利奈はそのなぞを、ミステリー作家であるこの俺に推理してほしいというのだ。俺、利奈、桐山優也、十文字省吾、新山亜沙美、須藤真利亜の6人は大学時代、この屋敷でともに芸術の創作に打ち込んだ仲間だった。6人の中に犯人はいるのか? 脳裏によみがえる青春時代の熱気、裏切り、そして別れ。懐かしくも苦い思い出をたどりながら事件の真相に近づく俺に、衝撃のラストが待ち受けていた。 《あなたはすべての伏線を回収することができますか?》

処理中です...