猫屋敷古物商店の事件台帳

鬼霧宗作

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査定2 惨殺アイちゃん参上【問題編】

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「偶然かもしれないけど、古物商店の店主さんが純平のクラスメイトなら話が早いわね。これ、飲み終わったら向かってみましょう」

 愛はそう言うとコーヒーを一口。一里之もコーヒーを口に運んではみるが、豆から挽いたコーヒーと缶コーヒーの味の違いが全く分からない。やはり苦いだけではないか。まぁ、さすがに中身は山菜汁ではなかったが。

 夕方であるということにくわえ、やはり周囲が閑散かんさんとしているせいか、この周辺が妙に物悲しく見えてしまう。長閑のどかで静かな場所なのかもしれないが、夜は恐ろしいほど寂しくなることだろう。別に門限などはないが、真っ暗になる前に帰りたいというのが一里之の本音だった。

 コーヒーを飲み終えると、一里之と愛はバイクにまたがる。売店のおばあさんの話だと、道路を挟んだ向かい側の集落に入れば良かったはず。道路に出る直前で左右を確認し、そのまま広い道路を突っ切って向かいの集落へと入った。集落自体はそこまで広いわけでもなさそうで、郵便局はすぐに見つかった。やや速度を落とすと、あっさりと店の看板が見つかった。随分と年季の入った家であり、玄関と店舗が一体化したような感じ。店には電気が点いているようで、営業はしているらしい。

 一里之は店の前にバイクを停めると、なるべく道路の端に寄せて駐車する。こんな片田舎の集落で駐車違反など取り締まりはしないだろうが、交通違反関係の罰金は高校生にとっては死活問題となる。お年頃で意気がってはいるものの、一里之は根本的に真面目な部分があった。

 愛と一緒に店の前へ。愛がアイコンタクトらしきものを取ってくる。すなわち、ここは男の一里之がまず声をかけろということなのであろう。一里之はガラス戸に手をかける。ガラス戸は想像通りの音を立てながら開いた。

「あの、すいませーん」

 ガラス戸から首を突っ込んで呼びかけてみると、奥のほうからガタンと音がして、しばらくすると「いらっしゃいませ」と少し歯切れの悪い感じの声が聞こえてきた。ここで愛と再びアイコンタクトをかわし、2人で揃って店内へと足を踏み入れる。

 店の中には売り物なのかガラクタなのか分からないものが並んでいるが、それよりも純平が目を奪われたのは、やはり見慣れたセーラー服だった。奥のほうはカウンターになっているようで、こちらに背を向けているせいで顔までは見えないが、もう間違いないだろう。同じ高校で猫屋敷などという苗字の女子は、一里之のクラスメイト以外にあり得ない。
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