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査定1 家族記念日と歪んだ愛憎【エピローグ】
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班目はあえて家族のことにはそれ以上触れないことにした。なんとなく触れてはならない――そんな気がした。
「もしよかったらご近所の方にでも。いつも集会所の駐車場を使わせてもらってますし。私の気持ちということで受け取っていただければ――」
実を言うとシュークリームを見るのさえしんどい。自分が食べないと千早が気を遣うだろうから、決死の覚悟でひとつは食べるつもりだが、すでにシュークリームを見るだけで口の中が甘ったるくなっていた。
「そういうことならば、いただきます。確か区長さん、甘いものお好きだったはずですから」
こちらの取り決めはよく知らないが、おそらく自治会の会長のようなポジションの人を、地区ごとに定めているのだろう。班目の地域には町内会長がいるものの、区長なんてのはいないわけであるし。場所によって呼び名が異なるだけだと思われる。
「それで、話は変わりますけど、例の事件についての後日談といいますか、報告です。あの後、長女に日記のことを突きつけてみたところ――あっさりと犯行を認めました」
班目が持ち込んだ日記帳。それが4年周期で書かれていることが判明した途端、捜査は大きく進展を見せた。警察が日記帳の内容を勘違いして解釈したこともあって、長女も犯行を認めなかったのであろう。しかしながら、日記帳の謎が明らかになったことで、きっと長女の心が折れてしまったのだ。
「動機もほとんど正解でしたよ。被害者は長女に異常な恋愛感情を抱き、自らの娘を我が物とした。結婚の話が破断したのも、色々と被害者が裏で手を回し、あちらから断るように仕向けたそうです。その事実を知ったのが最近のことであり、これまでの性的虐待の件もあって犯行に及んだとのことです」
動機は千早の推測通りだった。全ては被害者の異常すぎる愛情が招いてしまったこと。他者に愛情を注ぐことが必ずしも善いことではないと――時として薬は毒になると主張するかのような結末である。
「とにかく、おかげさまで事件は解決に向かって進み始めました。日記帳の謎が暴かれることさえなければ、長女はいまでもシラを切り通していたことでしょう。いち警察の人間として礼を申し上げます」
盆に乗せてきた小皿にシュークリームを移しつつ「私は自分の仕事をしただけですから」と千早。班目は「またまた、ご謙遜を」と返しつつ、小皿に乗ったシュークリームを目の前にして、やや尻込みした。どうにもイメージだけで口の中が甘ったるくなって仕方がない。
「もしよかったらご近所の方にでも。いつも集会所の駐車場を使わせてもらってますし。私の気持ちということで受け取っていただければ――」
実を言うとシュークリームを見るのさえしんどい。自分が食べないと千早が気を遣うだろうから、決死の覚悟でひとつは食べるつもりだが、すでにシュークリームを見るだけで口の中が甘ったるくなっていた。
「そういうことならば、いただきます。確か区長さん、甘いものお好きだったはずですから」
こちらの取り決めはよく知らないが、おそらく自治会の会長のようなポジションの人を、地区ごとに定めているのだろう。班目の地域には町内会長がいるものの、区長なんてのはいないわけであるし。場所によって呼び名が異なるだけだと思われる。
「それで、話は変わりますけど、例の事件についての後日談といいますか、報告です。あの後、長女に日記のことを突きつけてみたところ――あっさりと犯行を認めました」
班目が持ち込んだ日記帳。それが4年周期で書かれていることが判明した途端、捜査は大きく進展を見せた。警察が日記帳の内容を勘違いして解釈したこともあって、長女も犯行を認めなかったのであろう。しかしながら、日記帳の謎が明らかになったことで、きっと長女の心が折れてしまったのだ。
「動機もほとんど正解でしたよ。被害者は長女に異常な恋愛感情を抱き、自らの娘を我が物とした。結婚の話が破断したのも、色々と被害者が裏で手を回し、あちらから断るように仕向けたそうです。その事実を知ったのが最近のことであり、これまでの性的虐待の件もあって犯行に及んだとのことです」
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盆に乗せてきた小皿にシュークリームを移しつつ「私は自分の仕事をしただけですから」と千早。班目は「またまた、ご謙遜を」と返しつつ、小皿に乗ったシュークリームを目の前にして、やや尻込みした。どうにもイメージだけで口の中が甘ったるくなって仕方がない。
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