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査定1 家族記念日と歪んだ愛憎【解答編】

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 班目が注目したのは【家族記念日 第3回】の記述だ。この時点でキンモクセイの花は、その前年の秋には花を開花させている。とどのつまり、日記帳の中では、植えた翌年の秋には花が咲いていたことになるのだ。ともすれば、千早のしたキンモクセイの説明に間違いがあるとしか思えない。挿し木とやらで育てたキンモクセイが、最低でも5年も花を咲かせないという情報が間違っていることになるだろう。

「そうですね。私もこの日記を手に取った時は勘違いしていました。しかしながら、私の言っていることに間違いはないのです。もし、そう聞こえるのであれば、勘違いしているのは班目様のほう――ということになるかと。いえ、この日記を手に取った誰もが、ごくごく当たり前のように勘違いしてしまったせいで、日記帳の中身がちぐはぐになってしまったのだと思います」

 勘違い。一体なにを勘違いしているのだというのだろうか。日記に書いてあることがちぐはぐになっていることは分かっているが、勘違いによってそれが引き起こされているとはどういうことなのか。

「その――なにを勘違いしているんですかね?」

 皆目見当もつかない班目は、早々に千早へと白旗をあげることにした。勘違いだと指摘されて気づけない部分なのだ。きっと自分であれこれ考えたって、凝り固まった頭では勘違いに気づけないだろう。こういういさぎよさも刑事には必要だ――と自分を正当化する。

「日記が書かれていた頻度ですよ。もっとも、こんな書きかたをされては勘違いしても仕方がないと思います。まず、この日記を読んだ誰もが、日記は毎年書かれているものである――と、勝手に思い込んだはずですから」

 班目はその言葉に警察手帳を凝視する。家族日記を書き写したそれは、毎年書かれているものだと思い込んでいた。

「えっ? 毎年書かれているものじゃなかったんですか?」

 その言葉を待っていたと言わんばかりに力強く頷いた千早は、しかし表情をひとつも変えずに言い放った。

「はい。そもそも、この日記のどこにもそんな記述はありません。日記が第1回から第8回まで順番に書かれているせいで、勝手に毎年書かれているものであると思い込んでしまっただけなんです」

 日記は毎年書かれていたわけではない。となると、全8回に渡って書かれている日記は、8年分というわけではないことになる。家族記念日自体は毎年行われていたようだが――。

「ならば、この日記は何年毎に書かれていたんでしょうか?」
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