クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
505 / 506
最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【エピローグ】

14

しおりを挟む
「あんなもん、怖くて交換なんてできないよ。大体、お金を払うべき団体自体が消えてなくなったようなもんだし」

 長谷川の言葉に首を横に振るアカリ。当たり前であるが、小切手を交換しようなんて考えた人間はいないようだ。事実、九十九だって交換をしていない。下手に小切手を交換しようとして、変なことに巻き込まれたらたまったものではない。あれだけのデスゲームをやらされた代償だと思えば妥当な金額なのかもしれないが、いざとなったら交換までは踏み出せない。もしかすると、最初からそのつもりで、小切手を用意していたのかもしれない。年金まで注ぎ込んでビルを買い取って改装したおっさんが、それ以上の資産を持っているとは、どうにも思えない。

「非日常的な世界は終わった。せいぜい、日常を満喫しろよ――っていうメッセージかもしれねぇな。あれは単なる紙屑になったと考えたほうが、精神衛生的には楽だ。まぁ、交換しようとするなら一声かけてくれ。本当に換金できたら、俺も換金するからよ」

 九十九の言葉に「それって私か長谷川さんを踏み台にするってことよね?」と呆れた様子で溜め息を漏らす。

「俺のおかげで拾った命のようなもんだろ? だったら、それくらいのことはしろよ」

 アカリの言葉に返してやると、長谷川が改めて2人の顔を見やる。

「なんにせよ、次の定例会は少し違った形でやったほうがいいかもな。こんな目立つような場所は駄目だ」

 この期に及んでまだ定例会をやるつもりらしい長谷川。まぁ、これから動画がどんどんと出回るわけだから、どこかのタイミングで集まって、有名人同士で安心感を抱きたいのかもしれない。

「そうね、また連絡して。それじゃ私はそろそろ」

 アカリはそう言うと「お釣りはいらないから」と、九十九にお札を手渡してくる。長谷川もそれにならって「君のコーヒー代くらい出るだろ?」と、これまたお札を手渡してくる。自宅警備員だから金がないのだと思われているのだろう。

「それじゃ、またな。俺からみんなに連絡するから」

 長谷川がそう言って席を立つと、アカリも一緒になって席を立つ。そして、そのまま店の外へとそれぞれに姿を消した。それを見計らったかのごとく、さっき頼んだおかわりのコーヒーが出てくる。

「ったく、揃いも揃って馬鹿にしやがって――」

 九十九はそう呟くと、窓の外に見える青空を眺めながらコーヒーを一口。

 やや胃に重たい苦味は、しかしどこまでも続く青空に吸い込まれ、どこかへと消えてしまったのだった。

―完―
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます

古池ケロ太
ミステリー
 わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。  古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...