496 / 506
最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【エピローグ】
5
しおりを挟む
そこからは本当に呆気なかった。廊下の先にはエレベーターがあり、それはしっかりと動いていた。それに乗って1階へと向かい、ごくごく当然のようにエントランスから外へと出た。
あまりにも簡単に出ることができたというか、最後の最後があまりにもあっさりとしていたせいもあって、逆に拍子抜けしてしまった。そこまで多くはないものの、通りの前を行き交う人達。車道には多くの車がひしめき合う。改めてビルを見上げてみる。まさか、こんな街のど真ん中で、あんなことが行われていたなんて誰も信じないことだろう。そして、それは現実のものとなるのだが。
財布もなければスマホもないため、助けを呼ぶのも一苦労だった。そこらへんにいる人に助けを求めればいいようなものなのだが、そこは東京の――都会特有の冷たさを知っている九十九達だからこそ、できなかった。
結局、近くにあった交番に駆け込んだ。九十九達はいたって冷静なつもりだったが、しかし周りから見れば、充分に興奮状態だったと思われる。人が死ぬか生きるかの瀬戸際でクイズ番組を繰り返し、そこから解放されたのだ。今思えば、あの時は人の死というものに慣れてしまっていたし、冷静な判断なんてできていなかったのだろう。交番で対応にあたった警察官の第一声が「とりあえず落ち着いて」だったのだから。
記憶を失っているとしても、一応刑事としての自覚はあったのだろう。小野寺が率先して事情を話す。小野寺は出雲と一緒にテレビ番組を視聴する立場だった。そうすることで小野寺が記憶を取り戻すことを出雲は期待したのであろうが、まるで無駄になってしまったようだった。
半信半疑といった具合で話を聞いていた警察官。しかし、小野寺だけではなく、他の人間も同じようなことを言うものだから、信じざるを得なくなったのであろう。応援を呼び、ビルの持ち主に連絡を取ったうえで調べてみるとのこと。状況によっては、所轄だけでは処理できないかもしれないとの説明もしてくれた。小野寺は「それで構わないから調べてください」と声を大にしていた。
――こうして、警察に全てを任せた九十九達は、パトカーという贅沢なタクシーに乗り込み、各々が各々の家へと帰っていった。家の鍵も失っていたが、九十九は良くも悪くも実家暮らし。家に帰ると普通に母親が出迎えた。これまで、数日外に出たままフラフラと戻らないこともあったから、特別何かを言われることもなかった。部屋に戻ると、律儀にスマートフォンと財布は部屋に置いたままになっていた。没収されたというか、元から持って出なかったということか。
あまりにも簡単に出ることができたというか、最後の最後があまりにもあっさりとしていたせいもあって、逆に拍子抜けしてしまった。そこまで多くはないものの、通りの前を行き交う人達。車道には多くの車がひしめき合う。改めてビルを見上げてみる。まさか、こんな街のど真ん中で、あんなことが行われていたなんて誰も信じないことだろう。そして、それは現実のものとなるのだが。
財布もなければスマホもないため、助けを呼ぶのも一苦労だった。そこらへんにいる人に助けを求めればいいようなものなのだが、そこは東京の――都会特有の冷たさを知っている九十九達だからこそ、できなかった。
結局、近くにあった交番に駆け込んだ。九十九達はいたって冷静なつもりだったが、しかし周りから見れば、充分に興奮状態だったと思われる。人が死ぬか生きるかの瀬戸際でクイズ番組を繰り返し、そこから解放されたのだ。今思えば、あの時は人の死というものに慣れてしまっていたし、冷静な判断なんてできていなかったのだろう。交番で対応にあたった警察官の第一声が「とりあえず落ち着いて」だったのだから。
記憶を失っているとしても、一応刑事としての自覚はあったのだろう。小野寺が率先して事情を話す。小野寺は出雲と一緒にテレビ番組を視聴する立場だった。そうすることで小野寺が記憶を取り戻すことを出雲は期待したのであろうが、まるで無駄になってしまったようだった。
半信半疑といった具合で話を聞いていた警察官。しかし、小野寺だけではなく、他の人間も同じようなことを言うものだから、信じざるを得なくなったのであろう。応援を呼び、ビルの持ち主に連絡を取ったうえで調べてみるとのこと。状況によっては、所轄だけでは処理できないかもしれないとの説明もしてくれた。小野寺は「それで構わないから調べてください」と声を大にしていた。
――こうして、警察に全てを任せた九十九達は、パトカーという贅沢なタクシーに乗り込み、各々が各々の家へと帰っていった。家の鍵も失っていたが、九十九は良くも悪くも実家暮らし。家に帰ると普通に母親が出迎えた。これまで、数日外に出たままフラフラと戻らないこともあったから、特別何かを言われることもなかった。部屋に戻ると、律儀にスマートフォンと財布は部屋に置いたままになっていた。没収されたというか、元から持って出なかったということか。
0
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ミノタウロスの森とアリアドネの嘘
鬼霧宗作
ミステリー
過去の記録、過去の記憶、過去の事実。
新聞社で働く彼女の元に、ある時8ミリのビデオテープが届いた。再生してみると、それは地元で有名なミノタウロスの森と呼ばれる場所で撮影されたものらしく――それは次第に、スプラッター映画顔負けの惨殺映像へと変貌を遂げる。
現在と過去をつなぐのは8ミリのビデオテープのみ。
過去の謎を、現代でなぞりながらたどり着く答えとは――。
――アリアドネは嘘をつく。
(過去に別サイトにて掲載していた【拝啓、15年前より】という作品を、時代背景や登場人物などを一新してフルリメイクしました)
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
失った記憶が戻り、失ってからの記憶を失った私の話
本見りん
ミステリー
交通事故に遭った沙良が目を覚ますと、そこには婚約者の拓人が居た。
一年前の交通事故で沙良は記憶を失い、今は彼と結婚しているという。
しかし今の沙良にはこの一年の記憶がない。
そして、彼女が記憶を失う交通事故の前に見たものは……。
『○曜○イド劇場』風、ミステリーとサスペンスです。
最後のやり取りはお約束の断崖絶壁の海に行きたかったのですが、海の公園辺りになっています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる