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最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【エピローグ】

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 そこからは本当に呆気なかった。廊下の先にはエレベーターがあり、それはしっかりと動いていた。それに乗って1階へと向かい、ごくごく当然のようにエントランスから外へと出た。

 あまりにも簡単に出ることができたというか、最後の最後があまりにもあっさりとしていたせいもあって、逆に拍子抜けしてしまった。そこまで多くはないものの、通りの前を行き交う人達。車道には多くの車がひしめき合う。改めてビルを見上げてみる。まさか、こんな街のど真ん中で、あんなことが行われていたなんて誰も信じないことだろう。そして、それは現実のものとなるのだが。

 財布もなければスマホもないため、助けを呼ぶのも一苦労だった。そこらへんにいる人に助けを求めればいいようなものなのだが、そこは東京の――都会特有の冷たさを知っている九十九達だからこそ、できなかった。

 結局、近くにあった交番に駆け込んだ。九十九達はいたって冷静なつもりだったが、しかし周りから見れば、充分に興奮状態だったと思われる。人が死ぬか生きるかの瀬戸際でクイズ番組を繰り返し、そこから解放されたのだ。今思えば、あの時は人の死というものに慣れてしまっていたし、冷静な判断なんてできていなかったのだろう。交番で対応にあたった警察官の第一声が「とりあえず落ち着いて」だったのだから。

 記憶を失っているとしても、一応刑事としての自覚はあったのだろう。小野寺が率先して事情を話す。小野寺は出雲と一緒にテレビ番組を視聴する立場だった。そうすることで小野寺が記憶を取り戻すことを出雲は期待したのであろうが、まるで無駄になってしまったようだった。

 半信半疑といった具合で話を聞いていた警察官。しかし、小野寺だけではなく、他の人間も同じようなことを言うものだから、信じざるを得なくなったのであろう。応援を呼び、ビルの持ち主に連絡を取ったうえで調べてみるとのこと。状況によっては、所轄だけでは処理できないかもしれないとの説明もしてくれた。小野寺は「それで構わないから調べてください」と声を大にしていた。

 ――こうして、警察に全てを任せた九十九達は、パトカーという贅沢なタクシーに乗り込み、各々が各々の家へと帰っていった。家の鍵も失っていたが、九十九は良くも悪くも実家暮らし。家に帰ると普通に母親が出迎えた。これまで、数日外に出たままフラフラと戻らないこともあったから、特別何かを言われることもなかった。部屋に戻ると、律儀にスマートフォンと財布は部屋に置いたままになっていた。没収されたというか、元から持って出なかったということか。
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