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最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【エピローグ】

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「まぁ、若干名――それに感謝しなきゃならない奴がいるみたいだけどな」

 横目で店のモニターに視線をやる九十九。こうして、自由に外を出歩き、自分の好きなものを飲み、または食べ、一日の行方を全て自分の思い通りにできる。この当たり前が、どれだけありがたいものだったのか、さすがに解放された直後は実感した。しかし、慣れというものは厄介で、もうすっかりと当たり前に戻りつつある自分がいる。

「ちなみに、例のスタジオが入ったビルは取り壊しが決まったらしい。元から、フロアの買い手がつかないビルだったんだが、さすがに集団拉致監禁事件が起きたビルとなったら、ますます買い手がつかんだろうし、所有しているだけ損だからな」

 九十九達が巻き込まれてしまった事件は、表向きでは集団拉致監禁事件ということで話がついている。正直なところ九十九はまるで納得していないのだが、おそらく謎の圧力が働いたのであろう。スタジオの周辺で見つかった遺体が、実は悪徳刑事に金を積んで罪を逃れていた人間だった――なんてことが公になってしまったら、警察の威信に関わる。相変わらず不祥事の多い組織ではあるが、さすがに警察関係者が金で事件隠蔽へと動いていたとなると洒落にならないのであろう。

「ちなみに――あいつはどうなった? 小野寺」

 ふと、彼の顔が頭に浮かび上がった九十九は問うてみた。警察関係者にとって、彼は頭痛のタネだ。あえてこれまで聞きもしなかったのであるが、なんとなく気になった。

「とうとう、それを聞くか……」

 同じ警察の人間として、やはり長谷川も触れようとしていなかったらしい。大きな溜め息を漏らすと「当たり前のことなんだが――」と前置きをする。

「本人は相変わらず思い出せないでいるようだが、懲戒委員会、公安委による会議の結果、懲戒免職が決まったよ。証拠はもちろんのこと、はした金を掴まされて、隠蔽を手伝った連中の証言もあってな。だからこそ、あの事件のことは、表向きは単なる集団拉致監禁事件なのさ」

 長谷川はもう一度溜め息。それは、組織に対して個人の無力さを憂いているのだろうか。この世の中には、残念ながら圧力という圧倒的な力が働いている。正しいものが全て正しいというわけではないし、その逆に間違っていることが全て間違っているというわけではない。まぁ、世の中には知らないほうがいいこともあるということだ。
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