487 / 506
最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【解答編】
10
しおりを挟む
それを言っていいものなのか、やや迷ったのであろう。アカリと凛が自然と顔を見合わせた。そのアイコンタクトが決定打となったのか、代表して凛が口を開く。
「……売るよね。大した金額にはならないと思うけど」
頭の中では理解していたつもりだが、いざ言葉として出されると、これほど辛いものはなかった。なんだか、娘から裏切られてしまったような気さえしてしまう。
「その通り。明らかに荷物となってしまっていた旅行雑誌。ただでさえ外は雨で足元も悪い。荷物の中にねじ込むこともできないし、かといって、さすがにどこかへと捨て置くわけにもいかない。だからこそ、被害者は古本屋に立ち寄り、旅行雑誌を売ってしまったんだ。これなら、多少なりとも金になるし、その金を旅行の費用に充てれば、父親の気持ちを踏みにじることにもならないからな。まぁ、はっきり言って免罪符にもならないが、そう考えても仕方がない状況だったんじゃねぇか?」
言葉の最後に放った、投げかけるかのような言葉。それは出雲に向けてのものだったのだろうか。だとしたら、まるで諭されているようで面白くない。ここでの全てを支配している自分が、解答者に同情されるなんて堪ったものではない。
「本を古本屋に売った後に喫茶店に立ち寄ったってことか――だったら、その時点で旅行雑誌が手元にないのは当然だよな」
長谷川が納得するかのごとく頷くが、しかしすぐに疑問が湧き上がったのであろう。言葉を九十九のほうへと向ける。
「ってことは、被害者は売っ払った旅行雑誌をわざわざ取りに戻ったってことか? ただでさえ荷物になっていて、ようやく古本屋に売って処分できたっていうのに」
分かっていても、言葉にされると、それが実に刺々しいものであり、出雲の心の奥底に遠慮なく入り込んでは、中で膨らんで突き刺さる。真実が知りたい。納得できる答えが知りたいだけだったはずなのに、どうしてこんなに痛い思いをしなければならないのか。いいや、痛みの先に真実があるのだとすれば、ここは耐えねばならないのかもしれない。
「そこがポイントなんだよ。被害者にとって、旅行雑誌は古本屋に売ってしまうほど価値のないものだった。だが――もしそれに付加価値がつくとしたらどうだ?」
九十九が真相に迫る。その度に胸が締め付けられるかのように痛くなる。いっそのこと答えを吐き出してくれたほうがありがたいというのに、けれどもまだ肝心の答えには辿りつかない。
「……売るよね。大した金額にはならないと思うけど」
頭の中では理解していたつもりだが、いざ言葉として出されると、これほど辛いものはなかった。なんだか、娘から裏切られてしまったような気さえしてしまう。
「その通り。明らかに荷物となってしまっていた旅行雑誌。ただでさえ外は雨で足元も悪い。荷物の中にねじ込むこともできないし、かといって、さすがにどこかへと捨て置くわけにもいかない。だからこそ、被害者は古本屋に立ち寄り、旅行雑誌を売ってしまったんだ。これなら、多少なりとも金になるし、その金を旅行の費用に充てれば、父親の気持ちを踏みにじることにもならないからな。まぁ、はっきり言って免罪符にもならないが、そう考えても仕方がない状況だったんじゃねぇか?」
言葉の最後に放った、投げかけるかのような言葉。それは出雲に向けてのものだったのだろうか。だとしたら、まるで諭されているようで面白くない。ここでの全てを支配している自分が、解答者に同情されるなんて堪ったものではない。
「本を古本屋に売った後に喫茶店に立ち寄ったってことか――だったら、その時点で旅行雑誌が手元にないのは当然だよな」
長谷川が納得するかのごとく頷くが、しかしすぐに疑問が湧き上がったのであろう。言葉を九十九のほうへと向ける。
「ってことは、被害者は売っ払った旅行雑誌をわざわざ取りに戻ったってことか? ただでさえ荷物になっていて、ようやく古本屋に売って処分できたっていうのに」
分かっていても、言葉にされると、それが実に刺々しいものであり、出雲の心の奥底に遠慮なく入り込んでは、中で膨らんで突き刺さる。真実が知りたい。納得できる答えが知りたいだけだったはずなのに、どうしてこんなに痛い思いをしなければならないのか。いいや、痛みの先に真実があるのだとすれば、ここは耐えねばならないのかもしれない。
「そこがポイントなんだよ。被害者にとって、旅行雑誌は古本屋に売ってしまうほど価値のないものだった。だが――もしそれに付加価値がつくとしたらどうだ?」
九十九が真相に迫る。その度に胸が締め付けられるかのように痛くなる。いっそのこと答えを吐き出してくれたほうがありがたいというのに、けれどもまだ肝心の答えには辿りつかない。
0
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
【完結】リアナの婚約条件
仲 奈華 (nakanaka)
ミステリー
山奥の広大な洋館で使用人として働くリアナは、目の前の男を訝し気に見た。
目の前の男、木龍ジョージはジーウ製薬会社専務であり、経済情報雑誌の表紙を何度も飾るほどの有名人だ。
その彼が、ただの使用人リアナに結婚を申し込んできた。
話を聞いていた他の使用人達が、甲高い叫び声を上げ、リアナの代わりに頷く者までいるが、リアナはどうやって木龍からの提案を断ろうか必死に考えていた。
リアナには、木龍とは結婚できない理由があった。
どうしても‥‥‥
登場人物紹介
・リアナ
山の上の洋館で働く使用人。22歳
・木龍ジョージ
ジーウ製薬会社専務。29歳。
・マイラー夫人
山の上の洋館の女主人。高齢。
・林原ケイゴ
木龍ジョージの秘書
・東城院カオリ
木龍ジョージの友人
・雨鳥エリナ
チョウ食品会社社長夫人。長い黒髪の派手な美人。
・雨鳥ソウマ
チョウ食品会社社長。婿養子。
・林山ガウン
不動産会社社員
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる