クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【出題編】

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「藤木。かつて被害者の婚約者だったお前に聞く。事故があった当時、何か気づいたことはあったか? 被害者は何を忘れたんだ?」

 九十九の問いかけは、半分カマをかけたものだった。忘れ物――それ自体に関しては、ある程度の推測が完了している。被害者と一緒にいた藤木だって気づいていたはずだ。ただ、ここで得たかったのは情報ではなかった。藤木のリアクションそのものだ。

「当時のことですか……。いや、再現映像を見ていただいた通りだと思いますよ。それに、ここで私が解答者のみなさんに助言するというのは、いささかナンセンスでしょうし」

 残念ながら情報は得られず。しかしながら、藤木のリアクションを見ることはできた。さらに追撃をせんとばかりに九十九は続ける。

「お前、実は気づいていたんだろ? 被害者が何を忘れたのか。そして、どうしてそれを1人で取りに戻らなければならなかったのか――。あの時、一緒にいた人間なら気づいていたはずなんだ。本来ならばあるべきものがなくなっていたことに」

 自分でも踏み込みすぎていることは分かっていた。けれども、畳み掛けずにはいられなかった。なぜなら、藤木もたどり着いているはずだから。誰よりも先に答えへとたどり着いているはずだから。

「それ以上は、答えを無理矢理引っ張り出そうとする行為だと捉えるぞ。あくまでも議論は解答者達の間でやってくれ」

 さすがにやり過ぎてしまったのか、出雲からストップがかかってしまった。九十九から解放された藤木は、少しばかり安堵したかのような表情を浮かべたが、しかしどこかバツの悪そうな顔も見せていた。どうやら、カマをかけたのは無駄ではなかったらしい。

「あと少しのところで止められたが、やっぱり忘れ物と、その忘れ物がなんだったのかを考えるべきみたいだな。どうやら、藤木はあまりその辺りに触れたくないらしい」

 藤木がその辺りに触れられたくない理由は痛いほどに分かる。同情するつもりは全くもってないのだが、しかし気持ちは分からなくない。

「だとしたら、その忘れ物について掘り下げたほうがいいな。あと、どれくらいの時間が残されているのかは不明だが――」

 長谷川が口を開くと同時に、ふと宙を眺めていた出雲が「そろそろいいか」と漏らす。彼の腕に時計がはめられているわけでもなければ、スタジオのどこかに時計があるわけでもない。それなのに、そろそろ――とはどういうことか。もはや、嫌な予感しかしない。
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