475 / 506
最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【出題編】
18
しおりを挟む
「藤木。かつて被害者の婚約者だったお前に聞く。事故があった当時、何か気づいたことはあったか? 被害者は何を忘れたんだ?」
九十九の問いかけは、半分カマをかけたものだった。忘れ物――それ自体に関しては、ある程度の推測が完了している。被害者と一緒にいた藤木だって気づいていたはずだ。ただ、ここで得たかったのは情報ではなかった。藤木のリアクションそのものだ。
「当時のことですか……。いや、再現映像を見ていただいた通りだと思いますよ。それに、ここで私が解答者のみなさんに助言するというのは、いささかナンセンスでしょうし」
残念ながら情報は得られず。しかしながら、藤木のリアクションを見ることはできた。さらに追撃をせんとばかりに九十九は続ける。
「お前、実は気づいていたんだろ? 被害者が何を忘れたのか。そして、どうしてそれを1人で取りに戻らなければならなかったのか――。あの時、一緒にいた人間なら気づいていたはずなんだ。本来ならばあるべきものがなくなっていたことに」
自分でも踏み込みすぎていることは分かっていた。けれども、畳み掛けずにはいられなかった。なぜなら、藤木もたどり着いているはずだから。誰よりも先に答えへとたどり着いているはずだから。
「それ以上は、答えを無理矢理引っ張り出そうとする行為だと捉えるぞ。あくまでも議論は解答者達の間でやってくれ」
さすがにやり過ぎてしまったのか、出雲からストップがかかってしまった。九十九から解放された藤木は、少しばかり安堵したかのような表情を浮かべたが、しかしどこかバツの悪そうな顔も見せていた。どうやら、カマをかけたのは無駄ではなかったらしい。
「あと少しのところで止められたが、やっぱり忘れ物と、その忘れ物がなんだったのかを考えるべきみたいだな。どうやら、藤木はあまりその辺りに触れたくないらしい」
藤木がその辺りに触れられたくない理由は痛いほどに分かる。同情するつもりは全くもってないのだが、しかし気持ちは分からなくない。
「だとしたら、その忘れ物について掘り下げたほうがいいな。あと、どれくらいの時間が残されているのかは不明だが――」
長谷川が口を開くと同時に、ふと宙を眺めていた出雲が「そろそろいいか」と漏らす。彼の腕に時計がはめられているわけでもなければ、スタジオのどこかに時計があるわけでもない。それなのに、そろそろ――とはどういうことか。もはや、嫌な予感しかしない。
九十九の問いかけは、半分カマをかけたものだった。忘れ物――それ自体に関しては、ある程度の推測が完了している。被害者と一緒にいた藤木だって気づいていたはずだ。ただ、ここで得たかったのは情報ではなかった。藤木のリアクションそのものだ。
「当時のことですか……。いや、再現映像を見ていただいた通りだと思いますよ。それに、ここで私が解答者のみなさんに助言するというのは、いささかナンセンスでしょうし」
残念ながら情報は得られず。しかしながら、藤木のリアクションを見ることはできた。さらに追撃をせんとばかりに九十九は続ける。
「お前、実は気づいていたんだろ? 被害者が何を忘れたのか。そして、どうしてそれを1人で取りに戻らなければならなかったのか――。あの時、一緒にいた人間なら気づいていたはずなんだ。本来ならばあるべきものがなくなっていたことに」
自分でも踏み込みすぎていることは分かっていた。けれども、畳み掛けずにはいられなかった。なぜなら、藤木もたどり着いているはずだから。誰よりも先に答えへとたどり着いているはずだから。
「それ以上は、答えを無理矢理引っ張り出そうとする行為だと捉えるぞ。あくまでも議論は解答者達の間でやってくれ」
さすがにやり過ぎてしまったのか、出雲からストップがかかってしまった。九十九から解放された藤木は、少しばかり安堵したかのような表情を浮かべたが、しかしどこかバツの悪そうな顔も見せていた。どうやら、カマをかけたのは無駄ではなかったらしい。
「あと少しのところで止められたが、やっぱり忘れ物と、その忘れ物がなんだったのかを考えるべきみたいだな。どうやら、藤木はあまりその辺りに触れたくないらしい」
藤木がその辺りに触れられたくない理由は痛いほどに分かる。同情するつもりは全くもってないのだが、しかし気持ちは分からなくない。
「だとしたら、その忘れ物について掘り下げたほうがいいな。あと、どれくらいの時間が残されているのかは不明だが――」
長谷川が口を開くと同時に、ふと宙を眺めていた出雲が「そろそろいいか」と漏らす。彼の腕に時計がはめられているわけでもなければ、スタジオのどこかに時計があるわけでもない。それなのに、そろそろ――とはどういうことか。もはや、嫌な予感しかしない。
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます
古池ケロ太
ミステリー
わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。
古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる