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最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【プロローグ】

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 いつもより短いドラムロールが止まる。駆け足というか、どこか投げやりになっているというか――答え合わせという最大の見せ場に対しての手抜き感があった。

 訪れた静寂。解答席を見回すと、藤木が声を高々と上げた。

「第4問の犯人は藤木流星――この私でしたぁ! まぁ、実際に犯行に及んだわけではありませんので、そういう設定……ということになりますが」

 まるで保身に走るかのようなことを付け足す藤木。事件そのものが創作されたものだったとして――これまでのルールは通用するのだろうか。そんな疑問を抱いた九十九の胸中を見透かしたかのように藤木が続ける。

「しかしぃ、例え創作された事件であっても、ルールはルールです。よって、この藤木流星は降板が決定しました! ただ、ひとつだけお願いがあります」

 これまでと同じ調子で続けていた藤木であったが、急に神妙な面持ちで両膝をスタジオの床につける。マイクを床に置くと、両手も床へとつけた。

「どうか、この行く末を見守らせてもらってから降板とさせていただけないでしょうか? 身勝手なことを申しているのは分かっています。しかし、何卒――何卒、よろしくお願いいたします!」

 マイクなしで響いた藤木の言葉。藤木はとうとう頭まで床につけてしまった。――土下座。藤木のキャラクターにはまるで似合わない行為だった。

 一同の視線が自分へと集まっていることに気づく九十九。決定権は誰にでもあるのだろうが、それを一任されているような感じか。

「――別に構わねぇんじゃねぇか? お前が降板しようが、降板しなかろうが、俺には関係無ぇからよ」

 黒幕の存在が明らかになり、またここから解放されるという話が出てきている今となっては、藤木が降板しようが降板しなかろうが知ったことではない。もちろん、こんな大それたことの片棒を担いだのであるから、相応の罰を受けるべきなのであろうが、藤木が罰を受けようが受けまいが、九十九にとって利益はない。気分的にスッキリするだけだ。

「あんたらもそれでいいだろ? それと藤木、頭を上げろ。似合わねぇことすんじゃねぇよ」

 九十九の言葉に一同から返ってきたのは、無言の頷きだった。藤木はこの番組の片棒を担いだのだし、憎むべき相手であることは間違いない。けれども、誰しもが彼の死を歓迎するわけではない。それくらいの理性はまだ持ち合わせている。藤木が顔を上げる。

「――ありがとうございます。それでは、この藤木流星。しかと最終問題を見届けさせていただきます」
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