455 / 506
最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【プロローグ】
10
しおりを挟む
いつもより短いドラムロールが止まる。駆け足というか、どこか投げやりになっているというか――答え合わせという最大の見せ場に対しての手抜き感があった。
訪れた静寂。解答席を見回すと、藤木が声を高々と上げた。
「第4問の犯人は藤木流星――この私でしたぁ! まぁ、実際に犯行に及んだわけではありませんので、そういう設定……ということになりますが」
まるで保身に走るかのようなことを付け足す藤木。事件そのものが創作されたものだったとして――これまでのルールは通用するのだろうか。そんな疑問を抱いた九十九の胸中を見透かしたかのように藤木が続ける。
「しかしぃ、例え創作された事件であっても、ルールはルールです。よって、この藤木流星は降板が決定しました! ただ、ひとつだけお願いがあります」
これまでと同じ調子で続けていた藤木であったが、急に神妙な面持ちで両膝をスタジオの床につける。マイクを床に置くと、両手も床へとつけた。
「どうか、この行く末を見守らせてもらってから降板とさせていただけないでしょうか? 身勝手なことを申しているのは分かっています。しかし、何卒――何卒、よろしくお願いいたします!」
マイクなしで響いた藤木の言葉。藤木はとうとう頭まで床につけてしまった。――土下座。藤木のキャラクターにはまるで似合わない行為だった。
一同の視線が自分へと集まっていることに気づく九十九。決定権は誰にでもあるのだろうが、それを一任されているような感じか。
「――別に構わねぇんじゃねぇか? お前が降板しようが、降板しなかろうが、俺には関係無ぇからよ」
黒幕の存在が明らかになり、またここから解放されるという話が出てきている今となっては、藤木が降板しようが降板しなかろうが知ったことではない。もちろん、こんな大それたことの片棒を担いだのであるから、相応の罰を受けるべきなのであろうが、藤木が罰を受けようが受けまいが、九十九にとって利益はない。気分的にスッキリするだけだ。
「あんたらもそれでいいだろ? それと藤木、頭を上げろ。似合わねぇことすんじゃねぇよ」
九十九の言葉に一同から返ってきたのは、無言の頷きだった。藤木はこの番組の片棒を担いだのだし、憎むべき相手であることは間違いない。けれども、誰しもが彼の死を歓迎するわけではない。それくらいの理性はまだ持ち合わせている。藤木が顔を上げる。
「――ありがとうございます。それでは、この藤木流星。しかと最終問題を見届けさせていただきます」
訪れた静寂。解答席を見回すと、藤木が声を高々と上げた。
「第4問の犯人は藤木流星――この私でしたぁ! まぁ、実際に犯行に及んだわけではありませんので、そういう設定……ということになりますが」
まるで保身に走るかのようなことを付け足す藤木。事件そのものが創作されたものだったとして――これまでのルールは通用するのだろうか。そんな疑問を抱いた九十九の胸中を見透かしたかのように藤木が続ける。
「しかしぃ、例え創作された事件であっても、ルールはルールです。よって、この藤木流星は降板が決定しました! ただ、ひとつだけお願いがあります」
これまでと同じ調子で続けていた藤木であったが、急に神妙な面持ちで両膝をスタジオの床につける。マイクを床に置くと、両手も床へとつけた。
「どうか、この行く末を見守らせてもらってから降板とさせていただけないでしょうか? 身勝手なことを申しているのは分かっています。しかし、何卒――何卒、よろしくお願いいたします!」
マイクなしで響いた藤木の言葉。藤木はとうとう頭まで床につけてしまった。――土下座。藤木のキャラクターにはまるで似合わない行為だった。
一同の視線が自分へと集まっていることに気づく九十九。決定権は誰にでもあるのだろうが、それを一任されているような感じか。
「――別に構わねぇんじゃねぇか? お前が降板しようが、降板しなかろうが、俺には関係無ぇからよ」
黒幕の存在が明らかになり、またここから解放されるという話が出てきている今となっては、藤木が降板しようが降板しなかろうが知ったことではない。もちろん、こんな大それたことの片棒を担いだのであるから、相応の罰を受けるべきなのであろうが、藤木が罰を受けようが受けまいが、九十九にとって利益はない。気分的にスッキリするだけだ。
「あんたらもそれでいいだろ? それと藤木、頭を上げろ。似合わねぇことすんじゃねぇよ」
九十九の言葉に一同から返ってきたのは、無言の頷きだった。藤木はこの番組の片棒を担いだのだし、憎むべき相手であることは間違いない。けれども、誰しもが彼の死を歓迎するわけではない。それくらいの理性はまだ持ち合わせている。藤木が顔を上げる。
「――ありがとうございます。それでは、この藤木流星。しかと最終問題を見届けさせていただきます」
0
お気に入りに追加
182
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
それは奇妙な町でした
ねこしゃけ日和
ミステリー
売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。
バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。
猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/mystery.png?id=41ccf9169edbe4e853c8)
わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます
古池ケロ太
ミステリー
わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。
古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる