クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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最終問題 クイズ 誰がやったのでSHOW【プロローグ】

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「――事故?」

 距離はかなり離れているはずなのに、出雲の眉間にシワが寄ったように見えた。それを彷彿させるだけの声色の変化があったというべきか。

「あの日は朝から土砂降りだった。娘は婚約者と一緒に婚前旅行に向かうはずだったんだ。刑事ってのは皮肉なもんでな、娘を駅まで送り届けてやった直後に呼び出しがあって、俺は現場に向かわなきゃならなくなった」

 一瞬だけ見せた鬼のような剣幕を引っ込め、これまでと同じ様子で口を開く出雲。ここに集められ、ここに閉じ込められつつ、わけの分からないクイズ番組をやらされてきた九十九達は、どうしても受け身の立場になってしまう。当然、この場面でもそうだ。遠い目を見せた出雲の回顧録を眺めることしかできない。口を挟むのはやめておくべきだと判断したのか、眠夢も例の発言以来、様子を伺っているようだった。

「娘が乗ったバスが土砂崩れに遭い、娘が巻き込まれて死んだのを知ったのは――俺がようやく他の現場から解放された時のことだった。小野寺の馬鹿から連絡があってな。念のために土砂崩れの現場に立ち会ったが、土砂崩れから助け出された被害者が、どうやら俺の娘らしい……なんて白々しいことを言われたんだよ。きっと、その頃にはうまい具合にやって、事件を事故へと見せかけていただろうに」

 思わず小野寺のほうへと視線をやる。記憶を失っているらしいが、出雲にそんなことを言われて無反応ではいられない。ややうつむいた表情には、困惑が浮かび上がっていた。

「俺が病院に駆けつけた時――もう娘は冷たくなっていた。小さいうちに母親を亡くして、色々と不憫な思いをさせた。それでも、ようやく結婚が決まって、これからだったというのに――娘は殺されたんだ」

 感情が入り混じる。はたから見ていても、出雲の感情がころころと入れ替わっているのが分かるのだ。怒りの表情を見せたかと思うと、悲壮感漂う表情を見せてみたり、そこに悲しみなどがくわわったかと思えば、今度は今みたいに無表情となる。彼が――出雲が壊れていることは明白だった。ゆえに九十九はあえて反論してみた。 

「だから、あの土砂崩れは事故なんだよ。あんた、そもそもの発想自体がイカれ――」

「事故じゃない! 娘は殺されたんだ! 娘を殺した憎き犯人が、まだのうのうと生きていやがる! だから俺が復讐をする! この手で、娘を殺した犯人を見つけ出し、そして殺してやるんだ! そうでなきゃ、そうでなければ――この怒りはどこにぶつければいい!」

 九十九の言葉を遮って声を張り上げる出雲。もはやマイクなど不要である。
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