クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第4問 死神と駅の中で【解答編】

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「事件そのものが創作だって?」

 あまりにも突拍子のないことを言っていることは、誰よりも九十九が分かっていた。長谷川の言葉にだって頷くことしかできない。いいや、頷いていいものなのかさえ分からないが。

「あぁ、今回の事件――どう考えても穴が多すぎる。30秒ごとに映し出されるカメラが切り替わる監視カメラの映像……つまり、俺達に提示されたものと同じものが警察に提出されていれば、3番カメラの映像を遅らせて、さもアリバイ作りをしたかのように見せかけることも、5人目の目出し帽が存在していないかのように見せかけることはできただろうよ。だが、実際に提出された映像は、それぞれが独立したものだろう。つまり、30秒ごとに映像が切り替わったりもしないし、1番から4番まで、それぞれノーカットで確認することができたはず。それならば、5人目の目出し帽の存在を確認することもできただろうし、他の映像との繋がりから、3番カメラだけ映像の流れ方が不自然であることも気づかれていたに違いない」

 冷静を装ってはいたが、もう頭の中ではパニックに次ぐパニックだった。真っ暗闇の中で、辛うじて足元のロープを確認しながら進む綱渡りのようなもの。下手をすると、進んだ先にロープがないかもしれないことを危惧しながら、しかし引き返すこともできないために前進するしかない。自分で確かめることもできないまま、頭に浮かんだ情報をつなぎ合わせる。九十九は一心不乱に続けた。

「ようするに、3番カメラを遅らせることで、容疑者のアリバイがあるように見せかけることや、5人目の目出し帽の存在を程よく隠すことができるのは――30秒ごとに映像が切り替わるという環境が前提にあったからこそなんだ。つまり、これは最初から、30秒ごとに映像が切り替わることが前提で作られたトリックであり、事件だったんだよ」

 この言葉に、果たして説得力というものがあるのだろうか。綱渡りであるがゆえに、さすがに不安になる。

「3問目の際、九十九さんは事件のことを、クイズのために起こされた事件だと推理しました。今回はクイズのために事件が起こされた……なんて小さなヤラセ疑惑ではなく、そもそも起きてもいない事件をでっち上げてクイズとして出題したということですか」

 この場で眠夢の一言は説得力がある。本人はキャラクターを偽っていただけのようであるが、その時から頭の回転だけは妙に早かった。言わば覚醒してしまった彼女が助け舟を出してくれるのはありがたい。
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