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第4問 死神と駅の中で【解答編】

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「木戸、難しく考える必要は無ぇんだよ。いつ犯人が被害者を突き落としに向かったのか――なんて考えるから、よけいに面倒になるんだ。いっそのこと、こう考えろ。3番カメラに映った2人は被害者を突き落としになんて行ってない……つまり、犯人じゃ無ぇってな」

 3番カメラの映像は確かに遅れていた。そして、九十九が逆算して出した倍速よりも、やや遅めの倍速で再生されていた。今さら、細かい数字を追う必要はないのだが、9分から9分30秒の映像が流れた頃は、すでに事件が起きた後だったのだ。つまり、3番カメラに映った2人は、どちらも被害者を突き落としになんて向かっていない。ホームで電車を待っていたら事件が起き、待っていた2人のうちの片割れが、実際に人が突き落とされたところに駆け寄っただけなのである。

「でも、待ってよ。これまでの話の流れだとさ、1番カメラに映ってた2人は犯人じゃないわけじゃん? となると、3番カメラに映っていた2人のどちらかが犯人ということになるけど、その2人も犯人じゃないとしたら――誰が犯人なの?」

 凛の、あまりにもごもっともな意見に、九十九は思わず苦笑いを浮かべた。どうやら、冷静さは完全に取り戻せたらしい。なんせ、苦笑いを浮かべる余裕さえも出てきたのだから。

「いないんだよ――最初から容疑者の中にはよ。もし、容疑者の中に犯人がいるとしよう。事件が起きた際には駅舎の外に2人、そしてホームに2人の容疑者がいた。この状況で被害者を突き落として逃走を図るとする。目出し帽で顔は隠せていたのかもしれないが、突き落とす場面をホームにいた人間に目撃される可能性は高い。また、逃走を図る際に、駅舎の外にいた2人にも目撃されることになるだろう。その場はうまいこと逃げ切れたとしても、後になって、その場にいた人間の目撃情報、そして監視カメラの確認により、犯人は簡単に割り出されていたはずだ。例え3番カメラの映像が他の映像より遅れていたとしても、警察だって目撃情報のほうを優先したはず。いや、そんなことせずとも、事件が起きた後に誰が姿を消したのかを調べれば、簡単に犯人は割り出せたはずだ。しかし、実際のところ犯人は捕まらずじまいだった。それは一体なぜなのか――」

 なんともふざけた答えなのだろうか。なんとも卑怯な答えなのだろうか。藤木はこの問題をいじわるな問題だと言った。確かに難問だとも言った。しかし、こんな結末あっていいのだろうか。

「犯人は近藤でも今井でも春日でも吉永でもない――。あの場に突如として現れた、5人目の目出し帽だったからだ」

 九十九の答えに、アカリと凛がほぼ同時に「はぁ?」と声を上げた。そのように反応したくなる気持ちは良く分かる。
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