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第4問 死神と駅の中で【解答編】
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小野寺の言葉をなぞるようにして、宙へと視線を泳がせる出雲。ふいに「あっ!」と声を上げる。
「3番カメラの最後の映像――9分から9分30秒が映し出された時には、その時点で1分と48秒くらいの誤差が出てたってことだよな? となると、あの時に映っていた映像は9分から9分30秒のものではなく……おおよそ7分20秒前後から7分50秒くらいのものだった。つまり――」
出雲がそこで言葉を区切り、またしても宙へと視線をやる。小野寺はすかさず割り込んだ。
「そう、事件が起きた時間帯になるんです。3番カメラにはほとんど大きな動きがありませんでした。事件が起きた時も、ただ目出し帽の2人が並んで電車を待っていただけ。事件が起きたからといって、その両名のどちらもホームの南側に駆けつけようともしなかった。3番カメラの映像に限り、まだ事件が起きる前だったから当然です。そして、3番カメラの最後の映像となる9分から9分30秒の間――この時になって、ようやく目出し帽の1人がホームの南側に向かう姿が映っています。この目出し帽はおそらく、被害者をホームから突き落とすためにホームの南側に向かったのだと思われます。実際に事件が起きたのは7分30秒から8分までの間なので、時間的に考えても間違いありません」
いくつかある監視カメラの映像。そのうちのひとつを遅らせることにより、被害者を突き落とした人物にアリバイがあるように見せかけたトリック。その謎は、ここに解き明かされた。テレビの中でも、九十九がほぼ同じようなことを口にしている。トリックに関しては今回も大正解というわけか。
「……なるほど、トリックに関してはある程度理解できた。だが、ここまでたどり着いても、俺には誰が犯人なのか皆目見当もつかない。この時点で犯人を断定することはできないだろ?」
監視カメラの一部を遅らせるというアリバイトリックはともかく、犯人の断定となると途端に自信がなくなる小野寺。この辺りは九十九の解答につられてしまったような感覚が、自分の中にもあった。答えは一筋縄ではいかない――そのように考えてはいたから、自然と藤木が犯人であるとの九十九の答えに賛同することはできた。しかしながら、そこに根拠を求められると、きっと何も言えなくなるだろう。
「あ、ある程度は絞り込めるとは思いますが、断定するまでにいたらなかったというのが、正直なところです」
小野寺が答えると、出雲は小さく溜め息を漏らした。出雲の期待を裏切ってしまったのだろうか。
ブラウン管では、まさしく同じような質問が、藤木から九十九へと投げかけられるところだった。
「3番カメラの最後の映像――9分から9分30秒が映し出された時には、その時点で1分と48秒くらいの誤差が出てたってことだよな? となると、あの時に映っていた映像は9分から9分30秒のものではなく……おおよそ7分20秒前後から7分50秒くらいのものだった。つまり――」
出雲がそこで言葉を区切り、またしても宙へと視線をやる。小野寺はすかさず割り込んだ。
「そう、事件が起きた時間帯になるんです。3番カメラにはほとんど大きな動きがありませんでした。事件が起きた時も、ただ目出し帽の2人が並んで電車を待っていただけ。事件が起きたからといって、その両名のどちらもホームの南側に駆けつけようともしなかった。3番カメラの映像に限り、まだ事件が起きる前だったから当然です。そして、3番カメラの最後の映像となる9分から9分30秒の間――この時になって、ようやく目出し帽の1人がホームの南側に向かう姿が映っています。この目出し帽はおそらく、被害者をホームから突き落とすためにホームの南側に向かったのだと思われます。実際に事件が起きたのは7分30秒から8分までの間なので、時間的に考えても間違いありません」
いくつかある監視カメラの映像。そのうちのひとつを遅らせることにより、被害者を突き落とした人物にアリバイがあるように見せかけたトリック。その謎は、ここに解き明かされた。テレビの中でも、九十九がほぼ同じようなことを口にしている。トリックに関しては今回も大正解というわけか。
「……なるほど、トリックに関してはある程度理解できた。だが、ここまでたどり着いても、俺には誰が犯人なのか皆目見当もつかない。この時点で犯人を断定することはできないだろ?」
監視カメラの一部を遅らせるというアリバイトリックはともかく、犯人の断定となると途端に自信がなくなる小野寺。この辺りは九十九の解答につられてしまったような感覚が、自分の中にもあった。答えは一筋縄ではいかない――そのように考えてはいたから、自然と藤木が犯人であるとの九十九の答えに賛同することはできた。しかしながら、そこに根拠を求められると、きっと何も言えなくなるだろう。
「あ、ある程度は絞り込めるとは思いますが、断定するまでにいたらなかったというのが、正直なところです」
小野寺が答えると、出雲は小さく溜め息を漏らした。出雲の期待を裏切ってしまったのだろうか。
ブラウン管では、まさしく同じような質問が、藤木から九十九へと投げかけられるところだった。
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