421 / 506
第4問 死神と駅の中で【解答編】
8
しおりを挟む
3番カメラの遅れについては、おおよその逆算で算出したつもりだ。もし小野寺の考えが正しければ、おそらくは0.8倍くらいの速度に収まるはずである。
「3番カメラは他の映像より若干スロー再生されていた。つまり、事件が発生した時間帯の映像は、スロー再生によってずれてしまった映像――事件が起きる前の映像だった。だから、他のカメラに入り込んでいる警笛が、3番カメラには入っていなかった」
出雲は何度も頷きつつ、貴重な煙草をくわえた。まだ数があるにはあるが、長期戦になる可能性を考えると、少しは節約して欲しいところであるが――。そんな出雲を尻目に小野寺は改めて口を開いた。
「えぇ、その通りです。映像もそうですが、音声もまた、事件の起きた7分30秒から8分までの間のものを全て公開しただけ。つまり、遅れていた3番カメラの7分30秒から8分までの映像と音声が公開されただけなんです。だから、他のカメラで事件が起きていた時間でも、何事も起きていない。もちろん、本来ならば入り込んでいるはずの音声も入り込まなかったんです」
カメラのひとつを遅らせることにより、その場にいる容疑者全員にアリバイがあるように見せかける。これこそが、今回のトリックなのである。しかも、その現場にいた人間には通用せず、映像を見た人間にだけ通用するようなトリックである。すなわち、これは映像を確認することになるであろう警察に向けて仕掛けられたトリックだと思われる。
「これ、実際にはそれぞれが独立したカメラだし、それぞれの映像が警察に提供されたのだと思います。その前に何者かが、時間のずれに気づかれないように時間表示を消し、3番カメラの再生速度を0.8倍にまで遅らせた状態で警察に提出されたんだと思います」
この0.8倍という数字には、ある程度の根拠があった。
「ちなみに、それぞのカメラと照らし合わせても、3番カメラが遅れていた可能性を示唆する点があります。まず2番カメラ――4分から4分30秒の映像で、駅舎にいた2人のうち1人がホームに向かって歩いて行くのが映っています。しかし、その直後となる5分から5分30秒の間の――3番カメラの映像では、その映像に動きがないんです。本来なら1人増えていてもいいはずなのにです。カメラにも死角があるから断定できませんでしたが、ホームに向かったはずの1人がどうして直後の3番カメラに映らなかったのか? それは、3番カメラの映像がこの時点で1分ほど遅れていたからです。事実、次の7分から7分30秒の間では、しっかり2人の目出し帽が3番カメラに映っています」
「3番カメラは他の映像より若干スロー再生されていた。つまり、事件が発生した時間帯の映像は、スロー再生によってずれてしまった映像――事件が起きる前の映像だった。だから、他のカメラに入り込んでいる警笛が、3番カメラには入っていなかった」
出雲は何度も頷きつつ、貴重な煙草をくわえた。まだ数があるにはあるが、長期戦になる可能性を考えると、少しは節約して欲しいところであるが――。そんな出雲を尻目に小野寺は改めて口を開いた。
「えぇ、その通りです。映像もそうですが、音声もまた、事件の起きた7分30秒から8分までの間のものを全て公開しただけ。つまり、遅れていた3番カメラの7分30秒から8分までの映像と音声が公開されただけなんです。だから、他のカメラで事件が起きていた時間でも、何事も起きていない。もちろん、本来ならば入り込んでいるはずの音声も入り込まなかったんです」
カメラのひとつを遅らせることにより、その場にいる容疑者全員にアリバイがあるように見せかける。これこそが、今回のトリックなのである。しかも、その現場にいた人間には通用せず、映像を見た人間にだけ通用するようなトリックである。すなわち、これは映像を確認することになるであろう警察に向けて仕掛けられたトリックだと思われる。
「これ、実際にはそれぞれが独立したカメラだし、それぞれの映像が警察に提供されたのだと思います。その前に何者かが、時間のずれに気づかれないように時間表示を消し、3番カメラの再生速度を0.8倍にまで遅らせた状態で警察に提出されたんだと思います」
この0.8倍という数字には、ある程度の根拠があった。
「ちなみに、それぞのカメラと照らし合わせても、3番カメラが遅れていた可能性を示唆する点があります。まず2番カメラ――4分から4分30秒の映像で、駅舎にいた2人のうち1人がホームに向かって歩いて行くのが映っています。しかし、その直後となる5分から5分30秒の間の――3番カメラの映像では、その映像に動きがないんです。本来なら1人増えていてもいいはずなのにです。カメラにも死角があるから断定できませんでしたが、ホームに向かったはずの1人がどうして直後の3番カメラに映らなかったのか? それは、3番カメラの映像がこの時点で1分ほど遅れていたからです。事実、次の7分から7分30秒の間では、しっかり2人の目出し帽が3番カメラに映っています」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
181
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる