クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第4問 死神と駅の中で【解答編】

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「ケンさんの言う通り、音声といっても雨の音だったり、電車の警笛だったり――その程度の音しか入っていなかったわけですが、実はそれだけで充分なんです」

 小野寺の言葉に出雲は首を傾げる。いまいちピンときていないのであろう。

「ここでポイントとなるのは3番カメラの音声です。ケンさん、3番カメラの音声ってどんなものだったのか覚えてます?」

 音声だけが流れるというシュールな光景を、出雲は何を思いながら眺めていたのだろうか。少なくとも小野寺は、3番カメラの音声を聞いた時点で、本来ならば入っていなければならない音声が入っていないことに気づいていた。

「あー、確かろくに音声なんて入っていなかったんじゃないか? 他のカメラには何かしらの音声が入り込んでいたから、逆に目立った印象だったな」

 1番カメラの音声は、雨音と通り過ぎる車のエンジン音を拾っていた。2番カメラは、最後のほうで電車の警笛男らしきものを拾っている。3番カメラは何の音声も拾っておらず、4番カメラでは電車のブレーキ音らしきものと一緒に警笛音が拾われている。

「そうなんです。3番カメラは何の音声も拾っていないんですよ。これって、おかしいと思いませんか?」

 同時刻、同じホームでは人が突き落とされるという事件が発生していた。その際、電車は警笛を鳴らしながらブレーキをかけ、ホームへと入ってきた。その警笛音は、駅舎内にある2番カメラでさえ拾っている。

「そうか……警笛だな? 本当なら3番カメラで警笛の音を拾っていなければならないのに、それを拾っていないんだ」

 ご名答。出雲の答えに小野寺は頷いた。あのタイミング――事件が起きた時の音声を切り取るのであれば、3番カメラは同じホーム内で発生していたであろう音を拾っていなければならない。電車のブレーキ音はまだしも、駅舎内まで聞こえた警笛の音は、少なくとも拾っていなければならないはずなのだ。

「その答えはいたってシンプル。あの時、3番カメラに映されていた映像は――まだ事件が起きる前の映像なんですよ」

 自分でも言葉足らずなのは分かっている。しかし、これこそが事件の答えなのだ。案の定、出雲はしかめっ面をして首を傾げた。さっそく補足する。

「僕達が見た映像なんですが、いくつか監視カメラらしくない造りになっていますよね? まず、あって当然とも言える時間表示がありません。そして、フレームレートが低いせいか、どの映像もパラパラ漫画のようになってしまっています。おそらく、犯人はこの環境を利用して、この謎の映像を作り上げたんだと思います」
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