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第4問 死神と駅の中で【解答編】

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 藤木が犯人であると仮定すると、彼の言動の意味も異なってくる。あえて言い回しを変えたのは、この問題に限っては、解答者以外の人間が犯人だったとしても不自然にならないため。わざわざ、犯人の性別を明かしてしまったのも、九十九でも長谷川でもない――ましてや、すでに死亡してしまった司馬や数藤でもなく、藤木という選択肢を分かりやすく提示するためだったのではないだろうか。

「それに、この第4問を難問であると藤木が言ったことにも納得できます。情報量が少ないから難易度が高いのではなく、そもそもこれまでと同じ思考――解答者の中に犯人がいるという考え方では、絶対に答えに辿り着けないからこそ、藤木は難問だと言ったのではないでしょうか?」

 小野寺の中では、一応ある程度が完結していた。しかしながら、今回ばかりは犯人がいまいちピンとこなかった。これまでの問題では、まるで答えが見えるかのごとく問題を紐解くことができたのに、今回ばかりは最後の最後まで犯人が誰なのか迷ってしまった。九十九の解答を見て、ようやく踏ん切りがついたといったところか。

「なんというか、飛躍しすぎているというか――お前はあれか? 監視カメラの謎はもう解けてるのか? 被害者が突き落とされた時、間違いなく他の容疑者は全員が他のカメラに映り込んでいた。だったら、誰が被害者を突き落としたんだ? 犯人が云々よりも、まずはそこから説明してくれ」

 自分で考える気がないのか、出雲はすっかり小野寺の答え待ちである。確かに、犯人に関してはぎりぎりまで分からなかった。しかしながら、監視カメラの映像に関しては、ピンとくる部分があった。

「ポイントとなるのは、事件が発生した時の音――なんです。あの時、本来ならば入っていなければならないはずの音が、あるところを映したカメラには入っていないんです」

 藤木の言った通りにシュールで仕方のなかった第二の特殊ルール。事件が起きた時の音声のみを流すという試みであったが、あれはやはり没にしなくて正解だったと思う。あそこにこそ、謎を解く鍵があったのだから。

「本来入っていなければならない音って言ってもな――特に会話みたいなのは聞こえなかったし、せいぜい聞こえても雨の音だったり、電車の警笛音だったり、ブレーキ音だったりで……これが、監視カメラの謎とどう関係してくるんだ?」

 被害者が突き落とされた時、容疑者全員が他のカメラに映り込んでいたという謎。これ、実は単純に作り出すことのできる謎なのだ。
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