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第4問 死神と駅の中で【出題編】

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「異論はないようですね――。それでは、今回は難問でございます。駅のホームから被害者を突き落として殺害した犯人は、果たして誰なのでしょうか? 今回も当然ながら、犯人はこの中にいます!」

 返事がなかったのをいいことに、場を盛り上げんとせんばかりに藤木が声を張り上げる。まだ、最終的に答えを決定する場面は残されているが、この状況下で答えを導き出さねばならない。

「それでは、シンキングタイム……スタート!」

 藤木の音頭で安っぽいBGMが流れ、それに合わせてカメラに向かって踊り出す藤木。それを眺めながら、九十九はひとつの可能性を見出していた。あまりにも馬鹿らしい可能性だった。

 ――可能性。あくまでも可能性だ。しかしながら、今回の第4問に限り、藤木のある言い回しが気になった。もっと正確に言うと、これまでの言い回しと少しだけ異なる言い回しをしたのである。それに加えて、少ない情報量から始まったにもかかわらず、一気に増えることになった情報。それこそ、いきなり犯人が絞り込めるほどに与えられたが、そこに藤木のどんな意図があったのか。全てを統合すると、この答えしか考えられない。

「みんな、聞いてくれ。確証はないんだが、もしかすると答えが分かったかもしれない」

 それは実に危険な賭けだった。しかしながら、これならば全てがひとつに繋がるのだ。

 被害者が突き落とされた時、容疑者は全員が他の監視カメラに映っていた。この現象については、すでに謎が解けている。問題は誰が被害者を突き落としたのか――ということになるのだが、ここはあえての逆算で仕掛けるしかない。すなわち、再現映像の中から答えを導き出すのではなく、現実から答えを導き出してしまうのだ。

「俺の考えが正しければ、犯人は――」

 BGMに合わせて踊る藤木の動きが、さらに激しくなったように見えた。まるで九十九の言葉を遮ろうとせんばかりに、そう――激しく。

 九十九の言葉に対して、一同の反応は様々だった。凛は困惑するようにみんなの顔を見回す。眠夢はもしかして可能性に気づいていたのかもしれない。小さく頷いた。アカリは驚いたように目を見開き、長谷川はスタジオ内を見渡す。

 第4問――いよいよ解答の瞬間が訪れようとしていた。そして少しずつ明らかになっていくのだ。このクイズ番組の存在異議が。

 九十九の知らないところで、静かに歯車は回り始めていた。
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