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第4問 死神と駅の中で【出題編】

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「今のところ得られる情報は監視カメラの情報のみ。これを、いくらでも見返しても構わないという設定にする理由は、おそらくこれだけでは真相にたどり着けない――もしくは、非常に高い難度になっているからだと考えられます。ならば、特殊ルールとやらを積極的に行使すべきです」

 眠夢も九十九に賛同。彼女の言う通り、今の情報だけでは、到底真相にたどり着けるとは思えない。たどり着けるにしても、画質の荒い映像の中から情報を引き出さねばならないため、かなりの労力となってしまうことだろう。

「最初からそのつもりだが、これだけ賛同が集まっていながら、俺だけ首を横に振るわけにはいかない。新たに分かることがあるかもしれないから、特殊ルールを使おう」

 人数が減ってしまったがゆえに、これだけで満場一致となってしまうのが、なんだか切ないように思えた。別に他人の人生を背負って生きていくつもりはないし、降板という名の死を迎えたやつらの仇討ちをするつもりもない。けれども、この奇妙な環境に放り込まれたという仲間意識のようなものはあった。

「そう言うことだ。特殊ルールを行使させてもらう。それで、これもさっきみたいに、音声を再生したい時間帯を指定すればいいのか?」

 先ほどの特殊ルールは、30秒間に限り、同じ時間帯の映像を全て確認できるというものだった。それの音声版になるのであれば、やはりこちらから時間を指定することは可能だろう。

「えぇ、その辺りは先ほどと全く同じで構いません。どこの時間帯の音声を聞きたいのかを指定していただき、これまた1番カメラから順番に音声だけを再生いたします。少しシュールな感じになってしまいますが、その辺はご愛嬌ということで」

 特殊ルールにより明かされる部分が、映像から音声へと差し代わっただけ。しかしながら、藤木の口ぶりからすると、同時に映像が流れるわけではなく、正真正銘の音声のみが流れる仕様になっているようだ。ただただ、音声のみが流れ、それに耳を傾ける。なるほど、確かにシュールな光景になるだろう。

「ここまでの流れだと、やっぱり被害者が突き落とされた時間帯の音声を確認するべきだと思うが、他に意見はないか?」

 焦点を合わせるのであれば、事件が起きた瞬間にするべきなのであろう。しかしながら、見落としている点だってないとは言えない。意識的ではなく、周囲に意見を求めるのが自然になりつつあった。
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