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第4問 死神と駅の中で【出題編】

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 4番カメラに関しては、事件が起きる7分30秒から8分の映像まで、ほとんど動きが見られず。ひたすらにホームに立って、電車を待っているであろう被害者の姿を映している。厄介なのは被害者に関しても容疑者と同じ格好だということくらいか。とにもかくにも、事件が起きるまではコピーアンドペーストしたような映像が続いた。

 問題の7分30秒から8分。これまでと変わらぬ様子で電車を待っていた目出し帽の背後に、そろりと歩み寄る目出し帽。犯行はほんの一瞬であり、被害者をホームから突き落とした犯人は、そのままカメラからフェードアウトしてしまう。

 最後に9分30秒から10分の間。一度は見た光景ではあるが、4番カメラには数名の人間が映っていた。唯一、目出し帽姿ではない駅員らしき人物が1人に、騒ぎを聞いて駆けつけたであろう目出し帽が3人映っていた。ここに映っていない目出し帽こそが、おそらく被害者を突き落とした犯人なのであろう。

 ――同じ映像を何周も見たせいか、やや目が疲れてきたような気がする。ただでさえ画質の荒いものをずっと見ているのだから当然なのかもしれない。まだまだ情報を収集する必要があるのかもしれないが、眼に疲れを感じていた九十九は、休憩の意味も込めて口を開いた。

「藤木、この事件の犯人――捕まってねぇんだよな?」

 もしかすると、誰かが動くのを待っていたのかもしれない。じっとモニターを眺めていた長谷川が小さく溜め息を漏らし、こめかみの辺りに指を当ててマッサージを始める。いくら自由に映像を見ることができても、限度というものがある。それは長谷川だけではなく、他の人間にも当てはまることだろう。方々から溜め息に似た吐息が漏れた。

「えぇ、もちろんです」

 藤木の返答に、九十九は小さく頷いた。どうやらこの事件に関しても、これまでの事件と同様に揉み消しのようなものがあったらしい。

「だとしたら、警察ってのは無能だなぁ。再現映像として再構築された映像を見る限りじゃ、容疑者全員が目出し帽を被っていたわけだが、実際の映像で目出し帽を被っていたのは犯人だけなんだろ? だとしたら、映像をじっくり見れば、誰が犯人だか分かりそうなものだがな」

 この事件――複雑のように見えるが、少なくとも未解決となるような事件ではない。正規の監視カメラの映像を確認すれば、誰が目出し帽なのか分かりそうなものであろう。もっとも、被害者が突き落とされた時、容疑者達の姿は他のカメラのいずれかに収められていたという謎は残るのだが……。しかし、現実的に考えて、この事件の犯人が捕まっていないというのは不自然なのだ。その根拠は、監視カメラの映像だけではない。
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