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第4問 死神と駅の中で【出題編】

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「そうですか。あの――言っておきますけど、かなりシュールになりますからね。同時に映像が流れるわけでもないので、場がもたない可能性もあります。その辺り、ご了承くださいよ」

 確かにシュールな絵面になってしまうかもしれないが、番組の構成部分を気にしなければならないのは藤木サイドだけであり、とにかくクイズに正解すればいい九十九達からすれば、どんなに番組が盛り下がろうとも関係ない。

「別に俺達はそれで構わんさ。番組を盛り上げてやることはできんだろうが」

 藤木がそれを気にしていることを知っているだろうに、あっけらかんとした様子で言う長谷川。そこに凛が「やれって言うなら、そこそこトークで盛り上げることができるけど」と口を挟む。すかさず藤木が「そこのグループはトークが下手だってネットで叩かれていませんでしたっけ?」と返した。ぐうの音も出ない様子で凛が引き下がる。

「それではもうひとつの特殊ルールを……と言いたいところなんですが、立て続けに特殊ルールをやってしまうのも面白くありません。もう少し時間を置いてからにしましょう。最低限の体裁は保ちたいと思っていますので」

 あくまでも番組の構成にこだわる藤木。ただでさえ盛り上がりに欠ける展開になりそうなのに、見せ場を前半に持ってきてしまっては、きっと後半が大いに盛り下がってしまう。なぜなら、音声のない再現映像を、解答者達が眺めるという景色が、延々と流れることになるからだ。制限時間を設けていない以上、多少なりとも変化のあることは途中に挟みたいのであろう。こだわりがあるのは結構だとして、藤木の目的はなんなのだろうか。

「それでは、また再現映像を流しますよ。すでに最初の特殊ルールは行使されましたから、指定された時間のみ、画面に1番から4番まで順番に、同じ時間帯の映像が流れるようになっています。ご希望の場所で映像を停止することもできます。さてさて、残されたもうひとつの特殊ルールを行使する前に、答えにたどり着く方が出てくるのでしょうか? もちろん、犯人はこの中にいます!」

 声を張り上げて無理矢理に見せ場を作っているように見える藤木。なぜ、クイズ番組なのか。それは黒幕にしか分からないかもしれないが、だったらなぜゆえに、藤木は黒幕に手を貸したのか。断られるのは分かりきっていたが、番組の構成を気にしている今ならば、もしかするともしかするかもしれない。九十九は口を開いた。

「なぁ藤木――。お前はなにが目的でこんなことをしてる?」
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