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第4問 死神と駅の中で【出題編】
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【2】
『その日は朝から土砂降りだった。この辺りは町の中心部からも離れているがゆえに、静かで民家も少ない。延々と広がる田園風景に、雷の音がこだまする』
『芸術作品を町のいたるところに設置し、観光客の集客を図る。それまでは農業くらいしか取り柄のなかった田舎であるがゆえに、当初は色々と揉めたそうだ。客の来なくなった高原に、訳のわからないわからない塔のようなものを建てたりするのだから、まるで抵抗のない住人は少なかったことだろう』
『巴津日駅。町の中心部となる駅から電車で20分程度のところにある無人駅だ。最近は都会でも見られるが、特に田舎では良くある光景である。文字通り駅員はいない。しかしながら、田舎だからといって防犯に無頓着な時代は終わっていた。しっかりと、その無人駅にも監視カメラがつけられていた。そう――事件のあった日も』
以上のような文章が、真っ黒な画面に白い文字としてびっしりと並び、下から上へとスクロールしていく。それを目で追いながら小野寺は首を傾げた。これならば、普通にナレーションを入れたほうがいいのではないか。毎回、再現映像の作り方に妙な格差というか、偏りがあるように思えるのは気のせいなのであろうか。
――出雲と2人で監禁をされてから、4日目の朝を迎えた。クイズ番組を観て、日が沈み、朝になると、またクイズ番組を観る。今回がこれで4度目なのだから、少なくとも監禁されてから丸4日以上は経過していることになる。いい加減、署に出てこない南雲と小野寺の身を案じて、同僚辺りが動いてくれていると助かるのであるが。
「さてさて、これでいよいよ4回目の放送だ。そろそろ、俺達がここに閉じ込められている理由もはっきりして欲しいところだな」
ぽつりと呟いた出雲の言葉に頷きつつ、再現映像が始まってしまったがゆえに「今はそれよりもテレビに集中しましょう」としか言えなかった。少しずつ何かが明らかになろうとしているが、しかしながら具体的には何が明らかになろうとしているのかが分からない。それが小野寺にとって妙なストレスになっていた。過去の記憶の一部が抜け落ちてしまっていることと、何かしらの関連性があるのだろうか。分からない。分からないから苛立ちを覚える。ゆえに、とりあえず目の前の問題点に目を向けて、それを解消しようとしている自分がいた。
番組はいつもの調子で始まった。解答席の空席が少し目立つようにはなってきたが、件の司会者はいつものように番組のタイトルコールをし、これまで通りに出題する流れとなった。早いもので、これで4問目である。
『その日は朝から土砂降りだった。この辺りは町の中心部からも離れているがゆえに、静かで民家も少ない。延々と広がる田園風景に、雷の音がこだまする』
『芸術作品を町のいたるところに設置し、観光客の集客を図る。それまでは農業くらいしか取り柄のなかった田舎であるがゆえに、当初は色々と揉めたそうだ。客の来なくなった高原に、訳のわからないわからない塔のようなものを建てたりするのだから、まるで抵抗のない住人は少なかったことだろう』
『巴津日駅。町の中心部となる駅から電車で20分程度のところにある無人駅だ。最近は都会でも見られるが、特に田舎では良くある光景である。文字通り駅員はいない。しかしながら、田舎だからといって防犯に無頓着な時代は終わっていた。しっかりと、その無人駅にも監視カメラがつけられていた。そう――事件のあった日も』
以上のような文章が、真っ黒な画面に白い文字としてびっしりと並び、下から上へとスクロールしていく。それを目で追いながら小野寺は首を傾げた。これならば、普通にナレーションを入れたほうがいいのではないか。毎回、再現映像の作り方に妙な格差というか、偏りがあるように思えるのは気のせいなのであろうか。
――出雲と2人で監禁をされてから、4日目の朝を迎えた。クイズ番組を観て、日が沈み、朝になると、またクイズ番組を観る。今回がこれで4度目なのだから、少なくとも監禁されてから丸4日以上は経過していることになる。いい加減、署に出てこない南雲と小野寺の身を案じて、同僚辺りが動いてくれていると助かるのであるが。
「さてさて、これでいよいよ4回目の放送だ。そろそろ、俺達がここに閉じ込められている理由もはっきりして欲しいところだな」
ぽつりと呟いた出雲の言葉に頷きつつ、再現映像が始まってしまったがゆえに「今はそれよりもテレビに集中しましょう」としか言えなかった。少しずつ何かが明らかになろうとしているが、しかしながら具体的には何が明らかになろうとしているのかが分からない。それが小野寺にとって妙なストレスになっていた。過去の記憶の一部が抜け落ちてしまっていることと、何かしらの関連性があるのだろうか。分からない。分からないから苛立ちを覚える。ゆえに、とりあえず目の前の問題点に目を向けて、それを解消しようとしている自分がいた。
番組はいつもの調子で始まった。解答席の空席が少し目立つようにはなってきたが、件の司会者はいつものように番組のタイトルコールをし、これまで通りに出題する流れとなった。早いもので、これで4問目である。
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