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第4問 死神と駅の中で【出題編】
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「強いて言うのだとすれば――」
アカリがやや遠くの宙を眺めながら口を開く。その辺りに過去の記憶をしまい込んであって、引っ張り出しでもしているのだろうか。それが終わったのか、改めて九十九のほうに視線を向けてくる。
「あのバスに乗っていた全員が、ここに集められているわけじゃないよね?」
アカリの言葉に真っ先に反応を見せたのは眠夢だった。
「確かに。あのバスに乗っていた人間が全て集められたのであれば、私の母もここにいたはず――と言いたいところなんですが」
そこで妙な区切り方をすると、ゆるく首を横に振る眠夢。
「母は昨年、癌で亡くなりました」
眠夢のプライベートなことに踏み込むつもりは微塵もなかったのであるが、結果的にプライベートなことを引っ張り出すような形になってしまった。彼女がまだ高校生なのだから、かなり若くして亡くなったことになるだろう。
「亡くなっていたら、ここに集めようにも集められないからな……」
分かりきっていることだから、わざわざ口にしなくともいいのだろうに、それを言葉にする長谷川。人のことは言えないが、空気というものを読んだほうがいい。
「桃山、お前……合宿に向かう途中だったんだよな? もちろん、アイドルのレッスンだろ? 他のメンバーも一緒に乗ってたわけだ。そいつらはどうしてる?」
眠夢の母親は癌で亡くなっているから、ここに集められることはなかった。しかしながら、確か凛は、グループの子と一緒に最後部席に座っていた――と証言していたはず。それならば、この場にその子らがいないのはなぜなのか。
「解散しちゃってから疎遠になってるし、知らないかなぁ。多分、死んだりはしていないだろうけど」
凛は悪気もなく答えたのだろうが、その言葉が眠夢の母親のことに直結するとは考えないのであろうか。やや眠夢の表情が曇ったのを見て、それをごまかすかのごとく九十九は話題を切り替えた。
「まぁ、そんなことを言い出したら、バスを運転していた運転手だって、ここにいなきゃいけなかったわけだし、この辺りのことは深く考えないほうがいいのかもしれねぇ」
まるで話が一区切りつくのを待っていたかのようだった。藤木が「はい、それではカメラを回しまーす」と、声を挙げる。残念ながらバスの事故についてはここまで。その前に切り抜けなければならない問題が立ちはだかる。
「さぁ、それでは本日も張り切って参りましょうね――」
そう言うと指を折りながらカウントダウンを始める藤木。カメラを回してセットの中央までやってくると、いつも通りのタイトルコールをするのであった。
「クイズ 誰がやったのでSHOW!」
――第4問目が始まる。
アカリがやや遠くの宙を眺めながら口を開く。その辺りに過去の記憶をしまい込んであって、引っ張り出しでもしているのだろうか。それが終わったのか、改めて九十九のほうに視線を向けてくる。
「あのバスに乗っていた全員が、ここに集められているわけじゃないよね?」
アカリの言葉に真っ先に反応を見せたのは眠夢だった。
「確かに。あのバスに乗っていた人間が全て集められたのであれば、私の母もここにいたはず――と言いたいところなんですが」
そこで妙な区切り方をすると、ゆるく首を横に振る眠夢。
「母は昨年、癌で亡くなりました」
眠夢のプライベートなことに踏み込むつもりは微塵もなかったのであるが、結果的にプライベートなことを引っ張り出すような形になってしまった。彼女がまだ高校生なのだから、かなり若くして亡くなったことになるだろう。
「亡くなっていたら、ここに集めようにも集められないからな……」
分かりきっていることだから、わざわざ口にしなくともいいのだろうに、それを言葉にする長谷川。人のことは言えないが、空気というものを読んだほうがいい。
「桃山、お前……合宿に向かう途中だったんだよな? もちろん、アイドルのレッスンだろ? 他のメンバーも一緒に乗ってたわけだ。そいつらはどうしてる?」
眠夢の母親は癌で亡くなっているから、ここに集められることはなかった。しかしながら、確か凛は、グループの子と一緒に最後部席に座っていた――と証言していたはず。それならば、この場にその子らがいないのはなぜなのか。
「解散しちゃってから疎遠になってるし、知らないかなぁ。多分、死んだりはしていないだろうけど」
凛は悪気もなく答えたのだろうが、その言葉が眠夢の母親のことに直結するとは考えないのであろうか。やや眠夢の表情が曇ったのを見て、それをごまかすかのごとく九十九は話題を切り替えた。
「まぁ、そんなことを言い出したら、バスを運転していた運転手だって、ここにいなきゃいけなかったわけだし、この辺りのことは深く考えないほうがいいのかもしれねぇ」
まるで話が一区切りつくのを待っていたかのようだった。藤木が「はい、それではカメラを回しまーす」と、声を挙げる。残念ながらバスの事故についてはここまで。その前に切り抜けなければならない問題が立ちはだかる。
「さぁ、それでは本日も張り切って参りましょうね――」
そう言うと指を折りながらカウントダウンを始める藤木。カメラを回してセットの中央までやってくると、いつも通りのタイトルコールをするのであった。
「クイズ 誰がやったのでSHOW!」
――第4問目が始まる。
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