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第4問 死神と駅の中で【出題編】

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「ということは、土砂崩れに巻き込まれた女性はバスの中ほどに乗っていたということか。言われてみればそうだったような気もするし、そうでなかったような気もするし――」

 全員が解答席へと着席し、まるで番組がもう始まっているかのような形で議論が続く。長谷川が過去の記憶を引っ張り出そうとしているようだが、しかし人間は忘れる生き物だ。特に事故の記憶なんてものは一刻も早く消してしまいたいし、無意識に避けてしまうもの。事実、ここにいる誰もが、お互いのことを赤の他人であると思っていた。いや、単純に同じバスに乗り合わせただけだから、赤の他人であることに違いはないのだ。誰も互いのことを覚えてなんていなかった。当たり前であろう。

「うん、私――その女の人とたまたま駅で一緒にバスを待っている時に話をしてるんだ。その日は婚前旅行だけど、色々とトラブルが続いて――とか、そんなことを話していたと思う。自分が言葉を交わしていたはずの人が土砂崩れに巻き込まれる瞬間を見ちゃったからね。あの時の光景は今でも覚えてる」

 土砂崩れはバスの中ほど……すなわち、前部と後部を避ける形でバスを襲ったということになるだろう。そのおかげで、後部座席にいた凛はもちろんのこと、前のほうに座っていた眠夢も助かった。ならば、当然ながら運転手も助かったことだろう。

「なんか妙な引っかかりがあるように思えて仕方がなかったんだが、今の桃山の話を聞いて、ようやくそれがなんだか分かった。いや、もしかすると当時も疑問視する声はあったのかもしれねぇな」

 バスの事故を追ってはみているが、正直なところそれが何に繋がるかは不明である。ただ、ここに集められた人間は例のバスに乗っていた。それだけは間違いない。もっとも、突き詰めたところで現状が変わるとは思っていないのであるが、しかしここはあえて問題提起しておこう。例のバスの事故には――不自然な点がある。

「どうしたんだ?」

 長谷川が問うてくる。この議論の行き着く先がまるで見えないから、少しでも意味を持たせたいと思っているのだろう。過去に起きたバスの事故こそが、九十九達を繋いでいる唯一の共通点なのだからなおさらだ。

「事故で亡くなった人はよ、婚前旅行に向かう最中だったんだろ? なら、相手はどうなった? 婚前のカップルが、バスに乗ってわざわざ別々の座席に座るとは考えにくい。まず間違いなく、隣同士――百歩譲っても近くの席に座るはず。なら、そいつも一緒に土砂崩れに巻き込まれていたはずだ」
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