クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第4問 死神と駅の中で【出題編】

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 目的の店は、駅からかなり離れた場所にあったと思う。しかしながら、この日の九十九は、それより大分前にバスから降りた。正確には降ろされた――というべきか。

 いつも通り音楽を聴いていた九十九のところに、わざわざバスを路肩に停めてまで運転手がやってきた。きっと、車内放送で注意を促したものの、聞き入れてもらえなかったから、直接やってきたのであろう。音楽を爆音で聴いていたので仕方がない。運転手が九十九のところまでやってきたのはいたってシンプルな理由。周りのお客の迷惑になるから、音量を下げてくれ――とのことだった。これまで、何度か同じ路線のバスに乗ったことはあったが、そんな注意をされるのは始めてだった。

 周囲の乗客からの視線が集まっていたこともあり、なんだか素直に応じるのも恥ずかしいような気がした九十九は、あえて運転手に反発した。すると、あちらもあちらで気に障ったのか、軽い口論へと発展する。さすがに傍観してはいられないと思ったのであろう。他の客が止めに入った。恰幅の良いその男――顔は覚えていないが、今となっては妙な親近感があるような気がする。

 結局、他の客が止めに入ったところで口論はストップ。頭にきた九十九は、その場でバスを降りることにし、運転手もそれに応じた。料金はいらないと言われたので、そのまま土砂降りの雨の中へと、バスを降りたのだった。

 走り去るバスのテールランプを、土砂降りの雨に打たれながら見送った九十九。そのバスが、のちに土砂崩れに巻き込まれたのを知ったのは、現場から放送されている生中継を見た時だった。あの時ばかりはゾッとしたものだ。

 これが九十九の記憶。あの事故に対する、現状で覚えている記憶である。そして、この事故に関しては――現在生き残っている全員に、心当たりがあるそうだ。

 この場に集められた人間は、決して無作為に選ばれたものではない。新聞の切り抜き記事から、ようやく見えていなかったミッシングリンクが見つかろうとしていた。

 例えば長谷川。詳しくは聞けなかったが、そのバスに乗った際、客と運転手の口論を止めに入ったという。すなわち、九十九と運転手の口論を止めに入った恰幅の良い男こそが、長谷川だった可能性があるのだ。

 他の面子――アカリ、眠夢、凛もまた、同じバスに乗り合わせていたという。やはり、自分が乗っていたバスが事故を起こしているがゆえに、強く記憶に残っているようだった。

 ようやく見えてきた共通点。もっと話し合うべき場面であったが、しかしペナルティーをちらつかされてしまったがゆえに、詳細をお互いに確認できずに現在へといたる。
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