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第4問 死神と駅の中で【プロローグ】

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「しかしながら彼女は女子高生。これだけのことをやるためには、それなりの資金が必要となるでしょうし、黒幕だと考えるのは、少しばかり難しいような気もします」

 消去法で考えるのであれば眠夢が怪しいわけであるが、けれども現実的に難しいことが多いように思える。スタジオという場所を用意し、また小野寺達を軟禁するためのビルの一室まで確保する。例え藤木が手を貸していたとしても、彼女に黒幕のポジションは重たすぎる気がした。それに、何よりも答えとして安直であり、このまま答えを確定してしまうと、間違いなく先入観となって邪魔をすることだろう。

「結局のところ、決定的な決め手がないからなぁ。それにしても、俺達はいつまでここに閉じ込められなきゃならんのか――。番組が終わるまでか? もしくは、番組が終わってもこのままなのか?」

 狭い部屋の中に男が2人。テレビが映像を流してくれるのは、クイズ番組のみで、他の番組など一切映してくれない。食べるものには困らないが、しかし時間を潰す術が圧倒的に少なく、窓の外に見える太陽が沈み、夜になるのをひたすら待つだけだ。出雲と会話を交わすこともあるが、しかし長続きなんてしない。ゆえに、寝て過ごすことがほとんどだ。出雲は出雲で初日の大量飲酒は反省したのか、酒を飲んで時間を潰そうとはしなくなった。もっとも、ちびちびと飲んではいるようだが。

「それが分かれば苦労はありませんね。一体、何のためにこんなところに閉じ込められているのか。そして、何のために残虐なルールつきのクイズ番組を観なければならないのか。藤木の意図はもちろんですが、黒幕の意図も分かりませんね」

 これが現状における着地点。現時点で出せる答えだった。何よりも張り合いがないのは、小野寺達が例え正しい答えを出したとしても、自分達が置かれている環境が変わるわけではないということだ。答えを導き出し、黒幕を当てることができたら解放される――そんな約束でもあるのならば、もう少し頑張りようがあるというものなのだが。

「まぁ、とりあえず次の放送を待つしかないってことかよ。仕方ねぇ――寝るか」

 出雲はそう言うと背伸びをし、そのままソファーへと横になった。小野寺は立ち上がり、鉄格子のはまった窓から外を眺める。

 空には恐ろしいほど澄んだ黒が広がり、その中で自らを主張するかのごとく月が輝いていた。眼下には街の明かりが見える。

 まるで鳥籠の中の鳥だな。そんなベタなことを考えついた自分を鼻で笑うと、小野寺もまたソファーに戻ったのであった。
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