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第4問 死神と駅の中で【プロローグ】

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 番組側が数藤にシャンパンを渡した理由。それは遠隔で殺人を行うためである。ならば、数藤からシャンパンをもらって飲むような真似をするのは、その趣旨に反することになる。確かに、出雲の言う通り、わざとやった可能性もゼロではないが――だとすれば、あまりにも大胆すぎる。それに、分かっていながら自ら毒を飲むという行為は、例え解毒方法が確立されていても、やはり簡単に実行できるものではない。その目的が、自らの容疑を晴らすためだとしたらなおさらだ。

「長谷川に関しては――もしも消火設備のボタンを押した人間が犯人だと定義されるのであれば、もしかすると容疑から外れるかもしれません。なんせ、彼は伊良部柚木の死体が発見されるまで、ほとんど九十九と一緒にいましたから」

 柚木の死因は、消火設備を利用したことによる二酸化炭素中毒。その設備を動かした人間こそが犯人だとすれば、長谷川にそんな暇はなかったはずだ。

「いや、バリケードを作るために自分の部屋に一度引っこんでる。その時に消火設備を操作したのかもしれない」

 珍しく出雲から反論される。もしそうだったとしたら、長谷川の楽屋の中に消火設備の操作盤のようなものが設置されているはずだし、つまり楽屋の中を調べられてしまったら1発でアウトだ。このような時、漫画やドラマなどでは安易にリモコン操作が引っ張り出されるが、消火設備などを設置する際には、消防などの許可が必要となる。下手をすれば人が死んでしまう事故が起こり得る危険な装置を、リモート操作できるようにしていれば、まず消防からの許可が降りないであろう。――こんな馬鹿げたことをやっている施設なのに、しっかりと手順を踏んで建設されているものだと考えると、なんだか滑稽に思えた。

「そうなると、操作盤が長谷川の楽屋にあることになります。それを他の人に見つかったら言い逃れできないでしょうね。まぁ、他の人の楽屋にも同じように消火設備の操作盤があるのならば話は別ですが」

 犯人を決めつけるのは危険である。それが先入観となって邪魔をしてしまうかもしれないから。それは分かっているのであるが、消去法で考えると黒幕になり得る人物は1人しかいない。だからと言って、黒幕であると断定できるほどの材料があるわけではないのだが、しかし――。

「となると、残るのは女子高生の西潟眠夢だけってことになるな。あくまでも消去法で考えたら――って話だが」

 出雲の言葉に小野寺は渋々と頷く――が、もちろん安易にそれを受け入れるつもりはない。それこそ安直というものだ。
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