クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
363 / 506
第4問 死神と駅の中で【プロローグ】

第4問 死神と駅の中で【プロローグ】1

しおりを挟む
「これで降板――死者は3人になってしまった。当たり前だが、1問が終わるごとに1人が必ず死ぬ。さてさて、あの中に、あとどれくらいの人殺しが含まれているんだか……。終わりが見えないな」

 ぽつりと漏らした出雲の言葉に、小野寺は小さく頷いた。あと何人が死んでしまうのか。赤の他人の小野寺からすれば、何人死のうが関係のないことなのかもしれないが、しかし――この胸騒ぎのようなものは何だろう。

 小野寺が自身の心の中に違和感を抱いたのは、昨日の放送が終わった辺りからだった。小野寺は事故によって記憶の一部を失っている。だからこそ、なおさら感じてしまうのかもしれないが――文字通りに何か忘れているような気がするのだ。それこそ、何か大事なことを。この事実に小野寺は戸惑いを隠せずにいた。どうして、人殺しを暴くクイズ番組を見ているうちに、そんな気になってしまったのだろうか。番組の内容と、小野寺の抜け落ちた記憶――何か関係があるのだろうか。

 記憶が戻るのはありがたいことだった。失ってしまった過去を取り戻すことができるのだから。けれども、その反面で知らなくても良かったことを知ってしまう恐れもある。どうしてなのかは不明だが、小野寺の心の中にモヤモヤが広がっていることは事実。記憶を取り戻したいが、それは取り戻していい記憶なのだろうか。この妙な胸騒ぎは、本能的にそれを拒否しているからなのではないか。

「小野寺、お前――様子が変だぞ。どうしたんだ?」

 長年のコンビであるからこそ、微妙な変化にも気づけるのであろう。小野寺の心情を見透かしたかのごとく出雲が顔を覗き込んでくる。

「いえ、なんでもありませんよ。この軟禁生活のせいでリズムが崩れてるんでしょうね。ちょっと体調が悪いだけです」

 とっさに出た嘘だったが、しかしあながち嘘でもない。どこが体調不良かと問われれば解答に困るが、しかし決して万全の体調というわけではない。それは出雲とて同じことであろうし、当たり前のことを言っただけなのであるが、それで出雲は納得してくれたようだ。

「まぁ、こんなところにぶち込まれているわけだし、飯もインスタントばっかりだからな。そりゃ具合のひとつも悪くなるか」

 何よりも、番組が終わってしまうと事実上やることがなくなるのが大きかった。それが逆にストレスになってしまうというか、余計なことを考えてしまう暇を作り出してしまうというか。

「それにしても小野寺、一体誰が黒幕だと思う? なんでもありな感じになっているから、わけが分からなくなってきたな」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

それは奇妙な町でした

ねこしゃけ日和
ミステリー
 売れない作家である有馬四迷は新作を目新しさが足りないと言われ、ボツにされた。  バイト先のオーナーであるアメリカ人のルドリックさんにそのことを告げるとちょうどいい町があると教えられた。  猫神町は誰もがねこを敬う奇妙な町だった。

わたくしのご主人様はヴァンパイアでございます

古池ケロ太
ミステリー
 わたくしのご主人様は、ヴァンパイアでございます――。  古城に仕える「わたくし」は、優雅なヴァンパイアのご主人様に忠誠を誓う下僕。訪れる戦士や魔術師、そして最後の訪問者――繰り返される決闘の果てに明かされる“真実”とは。血と主従の物語が今、蠢き出す。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

処理中です...