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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】
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「おい! 伊良部っ! 何があったんだ!」
意図が知りたい。どうして土壇場で九十九達の護衛を拒絶したのか。やはり、最終的に信じられないということなのだろうか。それならば、鍵のかかった楽屋に1人でいたほうが、まだ安全だと考えたのか。しかしながら、黒幕にとって鍵なんてあって無いようなもの。何がきっかけで心変わりをしたのか知りたかった。
「私……は、過去に人を……殺しました」
声が途切れ途切れになってしまっているのは、彼女が泣いているからなのか。聞き逃さないように楽屋の扉に耳をつける。
「当たり前……かも……しれないけど、人は……死んだら二度と元には戻りません。私は……間違いなく、取り返しの……つかないことを……したんです。だから、これは……罰なんです。そう……罰」
果たして扉の向こう側で何が起きているのか。徐々に柚木の声が弱々しくなり、今にも消えてしまいそうになっているのは、九十九の気のせいなのだろうか。
「どうする? 最悪、ここで見張るしかないぞ」
長谷川が楽屋から持ち出したソファー。九十九が自分の楽屋から持ってきた食糧。柚木の楽屋に入ることができないのであれば、もう楽屋の前で第三者の侵入を防ぐしかない。けれども――扉の向こう側の柚木の様子から、九十九は妙な胸騒ぎを覚えていた。もはや、九十九と長谷川がどうこうしたところで、どうにもならないような――そんな気がする。
「おい、伊良部。おい――」
扉を叩いてみるが返事はない。こうなった以上、長谷川の言う通り廊下で見張るしかないだろう。しかし、それよりも九十九は柚木の様子が気になって仕方なかった。楽屋には鍵がかかるし、窓などはない。出入り口は扉のみだ。だからこそ中にいれば安全のように思えるのだが――果たして本当にそうだろうか。それに、このように解答者達が動き出すことくらい想定されていてもおかしくはない。
ガチャリ――と冷たい音がしたと思ったら、藤木が廊下へと姿を現した。彼専用の扉からである。本来ならば廊下には誰もいない時間帯。当然ながら、藤木はすぐに九十九と長谷川の姿に気づいた。
「困りますねぇ。これでは、次の問題――九十九さんと長谷川さんが解答権を失った状態でやらねばならないではありませんか。いよいよ盛り上がってきたというところで、特にメインの九十九さんが解答権を失うなど、興醒めもいいところです」
そう言う藤木の両手には、紙袋がぶら下がっていた。自然と視線がそっちにいったせいか、藤木は紙袋をやや上に持ち上げつつ口を開く。
意図が知りたい。どうして土壇場で九十九達の護衛を拒絶したのか。やはり、最終的に信じられないということなのだろうか。それならば、鍵のかかった楽屋に1人でいたほうが、まだ安全だと考えたのか。しかしながら、黒幕にとって鍵なんてあって無いようなもの。何がきっかけで心変わりをしたのか知りたかった。
「私……は、過去に人を……殺しました」
声が途切れ途切れになってしまっているのは、彼女が泣いているからなのか。聞き逃さないように楽屋の扉に耳をつける。
「当たり前……かも……しれないけど、人は……死んだら二度と元には戻りません。私は……間違いなく、取り返しの……つかないことを……したんです。だから、これは……罰なんです。そう……罰」
果たして扉の向こう側で何が起きているのか。徐々に柚木の声が弱々しくなり、今にも消えてしまいそうになっているのは、九十九の気のせいなのだろうか。
「どうする? 最悪、ここで見張るしかないぞ」
長谷川が楽屋から持ち出したソファー。九十九が自分の楽屋から持ってきた食糧。柚木の楽屋に入ることができないのであれば、もう楽屋の前で第三者の侵入を防ぐしかない。けれども――扉の向こう側の柚木の様子から、九十九は妙な胸騒ぎを覚えていた。もはや、九十九と長谷川がどうこうしたところで、どうにもならないような――そんな気がする。
「おい、伊良部。おい――」
扉を叩いてみるが返事はない。こうなった以上、長谷川の言う通り廊下で見張るしかないだろう。しかし、それよりも九十九は柚木の様子が気になって仕方なかった。楽屋には鍵がかかるし、窓などはない。出入り口は扉のみだ。だからこそ中にいれば安全のように思えるのだが――果たして本当にそうだろうか。それに、このように解答者達が動き出すことくらい想定されていてもおかしくはない。
ガチャリ――と冷たい音がしたと思ったら、藤木が廊下へと姿を現した。彼専用の扉からである。本来ならば廊下には誰もいない時間帯。当然ながら、藤木はすぐに九十九と長谷川の姿に気づいた。
「困りますねぇ。これでは、次の問題――九十九さんと長谷川さんが解答権を失った状態でやらねばならないではありませんか。いよいよ盛り上がってきたというところで、特にメインの九十九さんが解答権を失うなど、興醒めもいいところです」
そう言う藤木の両手には、紙袋がぶら下がっていた。自然と視線がそっちにいったせいか、藤木は紙袋をやや上に持ち上げつつ口を開く。
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