クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】

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 降板が確定してしまった犯人を、降板させぬように守る。この行為が、番組側から見たらよろしくないことは間違いないだろう。しかしながら抗う。理不尽にこんなことに巻き込まれてしまったのだ。それこそ、抗う力を失ってしまったら、その時は番組に屈服したことを意味するだろう。

 この先どうなるのか。どれだけの人が死に、そしてどれだけの人が生き残るのか。それら全てを握っているのは番組サイドであり、それに従っている以上、あちらが終わりだとでも言わない限り、番組が続いてしまうかもしれない。だから、終わらせるためにはイレギュラーなことを起こすしかない。あちらが作ったルールの中で動いている以上、こちらが不利なことに変わりはないわけであるし。

「おい、伊良部。お前の楽屋で迎え撃つぞ」

 いまだにうつむいたままの柚木に声をかける。これまで、ずっと引っ込み思案な高校教師を演じてきた彼女。いいや、さっきややヒステリックになったのは、きっと珍しいことで、やはり大人しく引っ込み思案なのが、彼女の本質なのであろう。九十九の言葉に顔を上げると、頷いたがどうだか分からないくらいに浅く頷く柚木。

「過去にやったことは変えられないかもしれない。しかし、犯罪者だから見捨てていいなんてこともない。ここを出たら出頭して、しっかりと罪を償え。それがやるべきことでもある――」

 長谷川はそこで言葉を切ると、ごくごく当たり前でありながら、しかし柚木にとっては救いになるであろう一言を放った。

「生きろ――ってことだよ。ここで死んだら罪を償うこともできなくなる。俺から言わせれば、死ぬのは逃避に等しい。その罪と向き合うためにも、今は生きることだけを考えるんだ」

 今度は力強く頷く柚木。罪を犯してしまった負い目は、きっとこの先も拭うことができないだろう。けれども、長谷川の言葉は柚木が生きる理由を明確に作り出した。彼女がこの場で生きていなければならない義務を与えた。それは彼女にとって、実にありがたいことだろう。

 長谷川が柚木の背中をポンと叩き、3人はスタジオの外に向かって歩き出した。すると、スタジオに別の足音が響く。振り返ると、アカリ、眠夢、凛がそれぞれに駆け寄ってきた。

「な、何があるか分からないから気をつけなさいよ」

 そばまでやってきたと思ったら、わざわざ腕組みをしてから言い放ってくれるアカリ。一応、その言葉は九十九に向けられたものになるのだろうか。
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