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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】

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 発生してしまった事件を、後になって隠蔽することは決して不可能ではないが、多大なる労力を使うしリスクも伴う。しかし、発生する事件そのものを自分で組み立てておけば、いくらでも隠蔽が可能であろう。今となっては数藤に確認することはできないが、もしかすると彼もまた、事件そのものをプランニングされていたのかもしれない。ただ、数藤の言い分だと、そこにはビジネス――金銭のやり取りが生じるはずなのだが。

「あのさ、もうちょっと凛達にも分かるように話してもらえない? 自分の中で勝手に納得して、さっさと話を次に進めちゃうの、九十九ッチの悪いところだと思う」

 この状況下でも九十九のことを愛称付きで呼ぶ凛の存在は、ある意味で心強く、またありがたい。疑心暗鬼に囚われてしまいそうだからこそ、彼女の独特な明るさが役に立つ。みんなにどのように説明するか考えあぐねていた九十九であったが、凛がきっかけを作ってくれた。

「あぁ、悪いな。どこかのタイミングで少しだけ触れたと思うが、実は数藤のおっさんから妙なことを聞いていたんだよ」

 九十九は要所要所をまとめ上げて簡潔にしつつ、一同に自分が得た情報を伝える。数藤から聞いた悪徳刑事のこと。その悪徳刑事が司馬の事件でも関与している可能性があるのではないかという疑い。そして、柚木がたまたま犯人としてフリップに書いたのもまた、刑事だということ。柚木はメールの相手が刑事であるということしか知らないようだし、相手が刑事ではないと言う可能性もある。けれども、実際のところ捜査では重要な点が見逃され、柚木が犯人として捕まることはなかった。ゆえに、刑事の関与があった可能性もまた、高いものだと考えられる。それにくわえて、九十九はある仮説を立てていた。ちょうどいいタイミングのようだから、それも一緒に吐き出してしまう。

「今回の一連の事件には悪徳刑事というか、警察関係者が関与していた可能性が高い。そして――その警察関係者は、もしかすると、この番組自体とも深い関わりがあるのかもしれない」

 これはあくまでも仮定。証拠があるわけでもないし、確証があるわけではない。しかし、もし柚木が起こした事件にプランナーが存在したのだとすれば、抜本的な部分でおかしな点が出てくる。

「番組との深い関わりが? どうしてそんなことが分かる?」

 長谷川の言葉に対して、九十九はあえて柚木の方へと視線をやった。ずっとうつむいたままの彼女は、少しだけ顔を上げ、九十九と目が合った途端に再びうつむいた。
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