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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】

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「あの時、俺達が議論していたのは、トリックのタネとなる部分。すなわち、どうやって【甲】の部屋から首吊り死体が消え、どのようにして改めて死体が現れたのか――というのが論点だった。この時点で、今回のトリックに気づいているのは俺だけという前提で考えると、伊良部は明らかにおかしな発言をしてるんだ」

 これまで並べ立てた情報でも、柚木が犯人であると示すには充分すぎるであろう。しかし、本人がそれを認めないのであれば、こちらとしては出せる情報を出して行くしかない。さっさと認めてしまったほうが楽になるような気がしないでもないのだが。

「桃山がマジックショーという言葉を漏らしてくれたおかげで、今回のトリックに俺はたどり着いた。その様子を見た木戸が、その大元になったマジックについて【アシスタントを消すマジックの類か】と俺に聞いている。俺達は【甲】の部屋から首吊り死体が消えたことについて議論していたわけだから、この発言は出てきても自然だと言える。だが、そのあとに続いた伊良部の発言――あれは、どう考えても論点がズレていた」

 改めて、どんな発言をしたのか問うために柚木のほうへと視線をやったが、柚木より先に野太い声が響いた。きっと、柚木の発言を覚えていたのであろう。長谷川だった。

「あの時、確か【マジシャン自身が移動するマジック】みたいなことを言っていたよな?」

 確認の意味も込めてであろうが、九十九と同じように柚木のほうへと視線をやる長谷川。彼女は顔を伏せたまま上げようともしない。答えるつもりがないのであれば、こちらで勝手に進めさせてもらうとしよう。長谷川の言葉に九十九は頷いた。

「あぁ、その通り。この際、消えるのはアシスタントでもマジシャンでも関係ないと思って欲しい。大事なのは、その対象が消えた理由だ。木戸の発言では、単純にその対象が消えると言う意味になる。【甲】の部屋で目撃された首吊り死体が消えた――この事象と一致するわけだ。でも、伊良部の発言によると、その対象が消えた理由は、単純に消えたからではなく移動したからなんだよ。じゃあ、今度は実際にどのようなトリックが犯行に使われていたのかを考えてみろ」

 できる限り独りよがりにならないように、最期まで周囲にも発言を機会を残しておく。これまで積み上げてきたことが実ってくれたようで、もう一同の答えは大方決まっているようだった。まさしく、これがトドメの一撃となるはず。
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