329 / 506
第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】
19
しおりを挟む
ここまで来てしまえば消去法。まず、改めて凛は容疑者から外れる。曲がりなりにもアイドルグループのセンターをしていた人間が、二足のワラジで教師をやっていたなんて、到底考えられない。そもそも、年齢的にも辻褄が合わなくなるだろう。
「あ、だから騒動が起きた後、【丙】が『ホテル側に謝っておく』って言ったんだね。あれ、どうして騒ぎを起こした本人でもないのに謝るのか疑問に思ってたんだけど、【丙】が教師っていう立場なら納得」
そんな凛は補足説明とばかりに、ちょうど九十九が補填しようと思っていた部分を埋めてくれた。
正直、もう犯人が誰なのかは明白だった。それでも、あえて消去法を頭の中で強行する九十九。自身で頭の中を整理する意味合いがあったのであろう。
眠夢は現役の高校生だ。【エキストラ】として登場した女子生徒の制服が、やや眠夢の着ているものに似ているように見えたが、どうやらそれは番組側が用意したミスリードというやつだったのであろう。現在、女子高生である彼女が、事件当時に教師をやっていたなんてことはあり得ない。ゆえに、眠夢も犯人から除外する。
「まぁ、そう言うこった。さて、この時点で犯人は2人に絞られた。まず、男は最初から犯人から除外されている。これは【丙】が女性であるという情報があらかじめ提示されているからだ。そして、アイドルグループのセンターをやっていた桃山、現役の女子高生である西潟は犯人から除外してもいいだろう。となると、残るは――木戸と伊良部ってことになる。そして、残った2人の中に、どう言うわけだか、たまたま犯人と全く同じ職種の人間がいた。すなわち、犯人はあんた――伊良部柚木だってことになるんだよ」
決定打。九十九の放った言葉が聞こえたのか聞こえないのか、柚木はずっと前を見据えたまま身動きひとつしない。放心状態のように見えなくもないが、何かを深く考え込んでいるようにも見えた。
「さてぇ、それでどうされますかぁ? 答えを変更したい方は、今のうちに変更しておいたほうがいいですよぉ」
九十九が決定打を放ったタイミングを見計らったのか、藤木がしばらく開いていなかった口を開いた。流れからして、そろそろ【最後の審判】も終わりとなるだろう。
「あ、あの――もしかすると木戸さんに教師だった経歴がないとも限りませんよね? 桃山さんだって、元アイドルかもしれませんけど、教師だった過去がないとは言い切れないのではないでしょうか? ね、年齢的に無理があるとか言われそうですけど……大体、アイドルって年齢詐称とかしてそうですし」
「あ、だから騒動が起きた後、【丙】が『ホテル側に謝っておく』って言ったんだね。あれ、どうして騒ぎを起こした本人でもないのに謝るのか疑問に思ってたんだけど、【丙】が教師っていう立場なら納得」
そんな凛は補足説明とばかりに、ちょうど九十九が補填しようと思っていた部分を埋めてくれた。
正直、もう犯人が誰なのかは明白だった。それでも、あえて消去法を頭の中で強行する九十九。自身で頭の中を整理する意味合いがあったのであろう。
眠夢は現役の高校生だ。【エキストラ】として登場した女子生徒の制服が、やや眠夢の着ているものに似ているように見えたが、どうやらそれは番組側が用意したミスリードというやつだったのであろう。現在、女子高生である彼女が、事件当時に教師をやっていたなんてことはあり得ない。ゆえに、眠夢も犯人から除外する。
「まぁ、そう言うこった。さて、この時点で犯人は2人に絞られた。まず、男は最初から犯人から除外されている。これは【丙】が女性であるという情報があらかじめ提示されているからだ。そして、アイドルグループのセンターをやっていた桃山、現役の女子高生である西潟は犯人から除外してもいいだろう。となると、残るは――木戸と伊良部ってことになる。そして、残った2人の中に、どう言うわけだか、たまたま犯人と全く同じ職種の人間がいた。すなわち、犯人はあんた――伊良部柚木だってことになるんだよ」
決定打。九十九の放った言葉が聞こえたのか聞こえないのか、柚木はずっと前を見据えたまま身動きひとつしない。放心状態のように見えなくもないが、何かを深く考え込んでいるようにも見えた。
「さてぇ、それでどうされますかぁ? 答えを変更したい方は、今のうちに変更しておいたほうがいいですよぉ」
九十九が決定打を放ったタイミングを見計らったのか、藤木がしばらく開いていなかった口を開いた。流れからして、そろそろ【最後の審判】も終わりとなるだろう。
「あ、あの――もしかすると木戸さんに教師だった経歴がないとも限りませんよね? 桃山さんだって、元アイドルかもしれませんけど、教師だった過去がないとは言い切れないのではないでしょうか? ね、年齢的に無理があるとか言われそうですけど……大体、アイドルって年齢詐称とかしてそうですし」
0
お気に入りに追加
183
あなたにおすすめの小説
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
人生の全てを捨てた王太子妃
八つ刻
恋愛
突然王太子妃になれと告げられてから三年あまりが過ぎた。
傍目からは“幸せな王太子妃”に見える私。
だけど本当は・・・
受け入れているけど、受け入れられない王太子妃と彼女を取り巻く人々の話。
※※※幸せな話とは言い難いです※※※
タグをよく見て読んでください。ハッピーエンドが好みの方(一方通行の愛が駄目な方も)はブラウザバックをお勧めします。
※本編六話+番外編六話の全十二話。
※番外編の王太子視点はヤンデレ注意報が発令されています。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる