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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】
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「決定的なのは、部屋から飛び出す際に【A】達が音を立てないように気を遣ったこと。これは、情景描写ではなく、ナレーションがはっきりと言ってしまっているから間違いない。もし、部屋に泊まっていたのが【A】と【C】だけならば、音を立てないように気を遣う必要がない。では、どうして【A】達は気を遣う必要があったのか――。それは、部屋で他の奴らが寝ていたからなんだよ。これらのことから【A】達は複数人でひとつの部屋を使っていたことが分かる。明確な描写はないが【B】も同じように班編成をされて、複数人でひとつの部屋を使っていたと思われる」
もう、ここまで言ってしまえば、どれだけ勘の鈍い人間でも気づくことであろう。本当ならば、犯人のほうへと向いてやりたいが、それをすると露骨だから、あえて目をそらしている――特に犯人のほうを意図的に見ないようにしているのが分かりやすいのは凛だった。彼女は曲がりなりにもネームバリューのあるアイドルグループにいたわけであるし、状況的に考えても犯人には当てはまらない。
「では逆に【甲】達はどうか? 事件があった【甲】の部屋はもちろんのこと、【乙】と【丙】の部屋も1人部屋だ。そもそも、【A】達のように複数人で部屋を使っていた場合、首吊り消失トリックを実行することが不可能になる。前提として、それぞれが1人で部屋を使っていたと考えていいだろう。くわえて、【乙】にいたってはホテルを抜け出して、外に酒を飲みに行っており、しかもそれを目撃されている。最後に、【丙】と【乙】は【A】達と明らかに顔見知りだった。ここまで言えば分かるだろう? なぜ【A】【B】【C】と【甲】【乙】【丙】――わざわざカテゴリされていたのか。そして、【A】達と【甲】達がそれぞれ何者なのか」
もう答えは出ているはずだし、ここまで分かりやすいものはないだろう。しかし、だからこそか――誰も口を開こうとはしない。その一言で、この中に混じっている犯人を告発するようなものなのだから当然かもしれない。誰だって、そんな役割を背負いたくはない。結局、あれこれと気を回してはみたが、トドメを刺すという役割は九十九に一任されているらしい。小さく溜め息を漏らして続けた。
「【A】達はホテルに訪れていた学校団体の生徒だった。そして【甲】達はその引率でホテルにやって来ていた教師だった――ってことだよ。つまり、犯人の【丙】は教師という職業だったわけだ」
もう、ここまで言ってしまえば、どれだけ勘の鈍い人間でも気づくことであろう。本当ならば、犯人のほうへと向いてやりたいが、それをすると露骨だから、あえて目をそらしている――特に犯人のほうを意図的に見ないようにしているのが分かりやすいのは凛だった。彼女は曲がりなりにもネームバリューのあるアイドルグループにいたわけであるし、状況的に考えても犯人には当てはまらない。
「では逆に【甲】達はどうか? 事件があった【甲】の部屋はもちろんのこと、【乙】と【丙】の部屋も1人部屋だ。そもそも、【A】達のように複数人で部屋を使っていた場合、首吊り消失トリックを実行することが不可能になる。前提として、それぞれが1人で部屋を使っていたと考えていいだろう。くわえて、【乙】にいたってはホテルを抜け出して、外に酒を飲みに行っており、しかもそれを目撃されている。最後に、【丙】と【乙】は【A】達と明らかに顔見知りだった。ここまで言えば分かるだろう? なぜ【A】【B】【C】と【甲】【乙】【丙】――わざわざカテゴリされていたのか。そして、【A】達と【甲】達がそれぞれ何者なのか」
もう答えは出ているはずだし、ここまで分かりやすいものはないだろう。しかし、だからこそか――誰も口を開こうとはしない。その一言で、この中に混じっている犯人を告発するようなものなのだから当然かもしれない。誰だって、そんな役割を背負いたくはない。結局、あれこれと気を回してはみたが、トドメを刺すという役割は九十九に一任されているらしい。小さく溜め息を漏らして続けた。
「【A】達はホテルに訪れていた学校団体の生徒だった。そして【甲】達はその引率でホテルにやって来ていた教師だった――ってことだよ。つまり、犯人の【丙】は教師という職業だったわけだ」
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