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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】

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「ここで考えて欲しいんだが、再現映像の中で出てきた【丙】の格好――なんだかおかしいと思わなかったか?」

 どうしても独壇場になってしまいそうな雰囲気。とりあえず周囲に問いかけることで、ワンマンにならないようにする。みんなで築き上げた答え――それが、一同を納得させる材料にもなり得るからだ。九十九が勝手に推論を展開させて、答えだけを押し付けたところで、忍び寄る疑心暗鬼の影には太刀打ちできないだろう。

「確か【丙】って、ホテルの部屋着っぽいのを着ていなかったっけ? 後は――厚手の靴下を履いていたくらいで、おかしなところはないんじゃない?」

 再現映像に【丙】が登場するのは、【A】達が現場に駆けつけた時であり、先にも後にも、それ以外の登場シーンはない。凛の答えをキャッチすると、すぐパス回しに入る九十九。

「厚手の靴下――これが妙に不自然なんだよ」

 再現映像に出てきた【丙】の格好は、ホテルの部屋着に厚手の靴下という格好だった。この格好に九十九は不自然さを覚えていたのだ。

「あ、もしかして女子のことよく分かっていないんじゃない? どうせ、寝る時に靴下を履くなんて不自然だ――とでも言いたいんだろうけど、靴下履いて寝ることは全然珍しくないし。むしろ、私も冬場そうして寝てるから」

 そのパスを受け取ったのはアカリだった。どうやら、九十九が感じ取った不自然さを勘違いしているらしい。さすがの九十九だって、女性が寝る時に靴下を履いて寝ることがあることくらい知っている。むしろ、性別に関係なく、寒がりや冷え性であれば、靴下を履いて寝ることもあるだろう。

「冬場ならな――でもよ、この事件が起きたのは冬場じゃねぇだろ? 実際に梅雨の時期に起きたことが明らかになってる。そんな時期に厚手の靴下なんて履いて寝るか?」

 男が思っているよりも女は冷え性である。そんな議論をしたいわけではないのだが、アカリが女性の代表とでも言わんばかりに返してくる。

「梅雨の時期だって、夜になれば冷える日もあるかもしれないじゃない」

 だから、論点はそこではないというのに――周囲に納得してもらうためとはいえ、なんでも質問を投げかけるような真似はやめた方がいいのかもしれない。スタンドプレイが得意な人間が、急にチームプレイをしようとしてもボロが出るということか。それでも、チームプレイに徹しなければ、チームそのものが崩壊するかもしれないから厄介だ。

「いや、少なくとも事件のあった夜は、厚手の靴下を履いて寝なきゃならないほどの気温じゃなかったはずだ」

 スタンドプレイに切り替えたいのを我慢しつつ、九十九は話を展開させる。
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