クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】

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 首吊り死体消失の謎。その実態は、実のところシンプルであり、単純なものだったのだ。それを少しずつ明らかにしていく。そして、この謎が解けると同時に、それが可能であった人物も一気に絞られる――いいや、特定されることになる。状況証拠となるものの、犯人を特定する上では、かなり重要な材料になり得るだろう。どうやら、九十九の独壇場は、それこそキリの良いところまで続きそうだ。一同が次の言葉を待っている。

「【A】達の部屋に電話をかけた犯人は、部屋のカーテンを開け、部屋の電気を点けると中庭に出た。そして、自分の部屋の隣となる【甲】の部屋の壁にベニヤ板を立てかけ、窓を塞いだんだ。後はベニヤ板の陰にでも隠れて【A】達が部屋から出てくるのを待てばいい。実際のところ、それだけでは【A】達が出てこなかったから、仕方がなく悲鳴を上げるふりをしたようだが」

 犯人は【A】達を呼び出した後、中庭へと出ると【甲】の部屋の窓をベニヤ板で塞いでしまった。そう――本来ならば廊下の左端に位置するはずの窓を塞いでしまったのである。

「犯人の思惑通りに部屋から出てきた【A】達は、深夜ということもあって、まさか一番左端にある【甲】の部屋の窓がベニヤ板で塞がれているとは気づかない。それに、犯人が首吊り死体をぶら下げた部屋には明かりが点いており、闇夜のなかではそれがもっとも目立つ。中庭越しに部屋の中を目撃した【A】達は、その隣にベニヤ板が立てかけられていたことから、首吊り死体を目撃したのは【甲】の部屋――もっとも左端の部屋であると思い込む。実際に目撃したのは、その隣の部屋なのにだ」

 その部屋が誰の部屋なのかはあえて言わない。犯人の様子を伺う意図もあるが、まだ答えを出すには情報が揃いきっていない。

「待って――。あのさ、例え深夜だといえども、ひとつの窓がベニヤ板で塞がれたんでしょ? その分、廊下が短く見えるだろうし、さすがに【A】達もまるで違和感を抱かないってことはないんじゃない? 左右のバランスも取れていないだろうし」

 そこでカットインしたのは凛だった。実に素晴らしいタイミングだった。九十九は笑みを浮かべて返してやる。

「桃山、事件の舞台となったホテル――別名でなんて呼ばれていたか覚えてるか?」

 これはきっと、あのホテルに別名がなければ起きなかった事件。芸術家と建築家がコラボして建造しなければ起きなかった事件なのだ。

「え、錯覚館だよね――」

 桃山の言葉に頷くと、九十九は真っさらなフリップを手に取る。これだけは山ほどあるし、解答という用途の他に使用しても構わないだろう。フリップにペンを走らせる。
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