クイズ 誰がやったのでSHOW

鬼霧宗作

文字の大きさ
上 下
314 / 506
第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【解答編】

4

しおりを挟む
 ぎりぎりの土壇場で、首吊り死体が消えて現れたプロセスにたどり着いた九十九。当然ながら、周囲の目も自然と九十九へと集まる。ここは主導権を握らせてもらって構わないだろう。それに、事件の最大の謎を解決しないことには、犯人が誰なのか議論することもできない。九十九は辺りを見回してから口を開いた。

「まずは、この事件の最大の謎――首吊り死体の消失について議論すべきだろう。【A】達が目撃してから、現場に駆けつけるまでに消失してしまった首吊り死体だが、根本的に俺達が勘違いしている点がある。それがどこだか分かるか?」

 主導権は握らせてもらうが、しかし九十九の独壇場となることは避けたい。弾き出した答えに納得してもらうためにも、形だけでも民主主義をしておいたほうがいいと九十九は考えた。それに加えて、この【最後の審判】の終了時間は、ほとんど藤木のさじ加減ひとつで決まると言っても過言ではない。効率良く話を進めるためにも、できる限り他の人間にも議論に加わってもらわねば。

「勘違いしている点? えー、何を勘違いしてるの?」

 ふんわりと九十九の意図は伝わっているのだろう。特に考えもないようだが、それでも口に出して場を繋ごうとするのは、アイドルという特殊な職業をしていたからであろうか。凛の言葉に、九十九は改めて周囲を見回し、真相へとたどり着くための1歩目を踏み出した。

「首吊り死体が消失した――。これこそ、俺達が勘違いをしている点。そして、再現映像の中で【A】達が勘違いしていた点なんだ」

 九十九の言葉に眠夢が口を開く。いよいよ議論らしくなってきたようだ。

「でも、【A】達が現場に駆けつけた時には、部屋は真っ暗で、しかも首吊り死体は消えていた。もしかして【A】達が見落としたって言うんですか?」

 いつものような間延びした喋り方は完全になりを潜めてしまった眠夢。さすがに状況が状況であり、楽観視できなくなっている証拠なのかもしれない。それは、いち解答者としてだろうか。それとも――。

「あっ、もしかしてこうじゃない? 【A】達が首吊り死体を目撃した際、実は犯人は同じ部屋の中に隠れていた。そして【A】達が部屋に向かってくるのを窓越しに確認すると、首吊り死体を下ろして――えっと、ベッドの下とかに隠す。犯人も電気を消して、部屋のどこかに潜んだ。その直後【A】達が現場へと駆けつけた」

 アカリがさも名案と言わんばかりに言うが、九十九は思い切り首を横に振ってやった。

「その工程を【A】達が駆けつけるまでにこなせたと思うか? 死体を下ろすだけでも時間が明らかに足りない。それに、死体ごと部屋に隠れるのはリスクが高いと思うぜ。下手すると【A】達に見つかりかねない」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

病弱な愛人の世話をしろと夫が言ってきたので逃げます

音爽(ネソウ)
恋愛
子が成せないまま結婚して5年後が過ぎた。 二人だけの人生でも良いと思い始めていた頃、夫が愛人を連れて帰ってきた……

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

消された過去と消えた宝石

志波 連
ミステリー
大富豪斎藤雅也のコレクション、ピンクダイヤモンドのペンダント『女神の涙』が消えた。 刑事伊藤大吉と藤田建造は、現場検証を行うが手掛かりは出てこなかった。   後妻の小夜子は、心臓病により車椅子生活となった当主をよく支え、二人の仲は良い。 宝石コレクションの隠し場所は使用人たちも知らず、知っているのは当主と妻の小夜子だけ。 しかし夫の体を慮った妻は、この一年一度も外出をしていない事は確認できている。 しかも事件当日の朝、日課だったコレクションの確認を行った雅也によって、宝石はあったと証言されている。 最後の確認から盗難までの間に人の出入りは無く、使用人たちも徹底的に調べられたが何も出てこない。  消えた宝石はどこに? 手掛かりを掴めないまま街を彷徨っていた伊藤刑事は、偶然立ち寄った画廊で衝撃的な事実を発見し、斬新な仮説を立てる。 他サイトにも掲載しています。 R15は保険です。 表紙は写真ACの作品を使用しています。

処理中です...