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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】

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「じゃあ、まずは司馬さんが殺された時のことから。司馬さんは楽屋に戻るまで間違いなく生きていた。だから、司馬さんが殺害されたのは、多分だけど楽屋にロックがかかってからだと思う」

 アカリは腕組みをすると、スタジオのどこを眺めるでもない、宙の一点を見つめながら推論の展開を始めた。合いの手を入れるべく、九十九も口を開く。

「言うまでもないが、黒幕はあちら側――番組側の人間だ。部屋のロックを解除することは簡単だろう。基本的に楽屋は1人で使っているわけだし、他の楽屋のロックを解除しなければ、誰にも見られずに司馬の楽屋に向かって、そして司馬を殺害することが可能なはずだ。そして、現時点では大半の人間がそれを実行することができたということになる」

 アカリは九十九の顔をチラリと見上げると、わざとらしくそっぽを向いた。

「へ、変な意味で取らないで欲しいんだけど、あなたと私はあの時、楽屋で一緒にいた。それこそ、楽屋にロックがかかる前から司馬さんが殺害されたと思われる時間帯まで。だから、私とあなたにはアリバイが成立するわ。私達に司馬さんを殺害することは不可能だった。これは間違いない事実だと思う」

 アカリは実に分かりやすい。さっきの言葉の端々に、九十九に対する好意のようなものを匂わせていたと思ったら、今度は明らかに拒絶するような態度を見せる。どうやら男女間の駆け引きというものが、とことん苦手らしい。そっち方面に話を持っていくと大きく脱線してしまいそうだったから、あえて触れずに話を続ける。

「司馬を殺害することができたのは、俺とお前を除く5人。長谷川、数藤、伊良部、桃山、西潟だ。数藤のおっさんは次の問題で殺害されることになるから除外してもいいだろう。つまり、黒幕の可能性があるのは長谷川、伊良部、桃山、西潟の4人だ」

 可能性の話をしてしまうと、まだまだ精査しなければならない部分が多い。しかし、情報の共有を行うという意味では、とりあえずの大筋だけをたどってみたほうがいい。アカリのことを完全に信じたわけではないが、他の人間に比べると、黒幕である確率がぐっと下がるのも事実だ。疑心暗鬼が侵食し始めている今だからこそ、アカリとの信頼関係は大切になってくるのかもしれない。

「だったら数藤さんの事件からも、黒幕を絞り込めたりしない?」

 アカリの言葉に首を横に振る九十九。司馬の事件に関しては、黒幕の候補を絞り込むことができるが、しかし数藤の場合は、その性質が性質だけに絞り込みは難しいだろう。
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