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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】

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「それじゃあ、話題を変えようか。黒幕って――誰だと思う?」

 第3問における犯人探しは諦めたが、その代わりに黒幕の話題を持ってくるアカリ。

「なんだ? 今日は妙に絡んでくるじゃねぇか? しかもウザ絡みのほう」

 休憩時間もそこそこになったら、藤木が戻ってくる前に議論を開始したい。そこから一同を納得させるように推測を展開させ、少なくとも【最後の審判】の時には、過半数以上の正解を出さねばならないのだ。その段取りを組むためにも、今は独りになりたいのだが。

「……なんでそういう言い方しかできないわけ? 私はただ、このままクイズを続けていくのなら、早いところ黒幕が誰なのかはっきりさせて、そっちを叩いたほうが早いと思っただけ。そ、それにさ――なんか妙にみんながギスギスしてるっていうか、漠然と不安になっちゃってさ。そういう時って――誰かにそばにいて欲しかったりするじゃんか」

 ふと隣を見ると、アカリはややうつむき、頬を赤らめているように見えた。司馬が殺害された際、九十九とアカリは一緒にいたため、お互いにアリバイが成立している。だからこそ、彼女は彼女なりに九十九のことを信頼しているのであろう。

「――抱いて欲しいなら抱いて欲しいって、はっきり言えばいいのによ」

 どんな反応をするか分かりきったうえで返してやると、案の定、頬を赤らめるどころか、おでこまで真っ赤にしてアカリが声を荒げる。

「そっ、そう言うのじゃないから! 何勘違いしてるんだか分からないけど、そう言うのやめてくれる?」

 彼女をからかうこともまた、ある種の精神安定剤のような効果があるらしい。気が少し楽になったことを自覚した九十九は、自分が思っている以上に追い詰められていることを知る。確かに、アカリの言う通り、クイズに答え続けるよりも、さっさと黒幕を暴いてしまったほうが、精神衛生上よろしいのかもしれない。

「まぁ、黒幕を見つけ出して叩くって発想は嫌いじゃない。少しくらいなら付き合ってやるよ」

 番組が終わったら楽屋に軟禁され、1日の大半は楽屋で過ごすことになる九十九達。楽屋にも窓はなく、蛍光灯も点いたままであるため、昼夜の判断もできないまま、再び楽屋のロックが解除されるのを待つ。そして、司馬と数藤が殺害されたのは、一同が楽屋に軟禁されている時間帯である。

 黒幕というくらいだから、自分の楽屋のロックを解除して外に出るくらい容易いことであろう。実際、司馬を殺害する際は、自分の楽屋のロックを解除して司馬の部屋へと向かったのであろうし。
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