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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】
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「廊下を折れ曲がって最初の部屋――中庭越しに見た左端の部屋の前へとやってきた【A】達。事情を聞いたフロントマンがフロントに鍵を取りに戻る。その際、騒動があった部屋の隣に宿泊していた【丙】が部屋から顔を出した。フロントマンが戻ってきて、流れで【丙】もその場に立ち会うことになる。フロントマンが声をかけて鍵を開けると【A】達が中を確認。しかし、部屋の中はもぬけの殻で、首吊り死体なんてなかった」
三人寄れば文殊の知恵――と言う言葉があるわけだが、まさしくその通りだと思う。ざっと通しで再現映像を見ている段階では、どの部分が重要なのか分からないから、どこに注目していいのか分からない。もちろん、誰が何を言ったのか――などと言うことを一言一句記憶しているわけではない。だから、記憶媒体という意味合いで、やはり1人よりも2人、2人より3人のほうがいいわけだ。事実、その辺りの記憶に関しては、九十九よりも眠夢のほうが強く記憶していたようだ。
「確か【A】達が首吊りを発見してから、フロントを経由して現場に到着したのが、長く見積もって1分程度。もし、何かしらの理由で死体が消えたのであれば、このわずか1分の間に死体が消えたことになる。しかも、それからは廊下に【A】達がずっといたんだ。死体を下ろして、どこかに隠して――そこまでの工程で考えても、明らかに時間が足りない」
九十九だけに主導権を握らせまいと必死なのであろう。議論から置いていかれぬようにと長谷川が口を挟む。ひとつ前の問題までは脇役でしかなかった男だったのに。まぁ、長谷川が九十九のことをどう思っているにしろ、議論が停滞してしまうよりかはマシだ。
「もっと正確に言えば、【A】達が廊下を折れ曲がり、フロント前を駆け抜けた時――つまり、部屋の窓が死角となった間に、何かしらが起きたと思われる。ほんの1分も満たない間にな」
突如として消えてしまった首吊り死体は、翌日の朝になって同じ場所――【甲】の部屋で発見された。しかし【A】達がそれを発見して駆けつけた際は、確かに部屋は何事もなかったかのごとくもぬけの殻だったのだ。もしこれが犯人の仕業だとしたら、果たしてどんな手段を犯人は用いたのだろうか。
「そんなこと――可能なのかな?」
凛がぽつりと漏らした。ただ、この時点で九十九には引っかかる点があった。わずか1分程度の間に消えてしまった首吊り死体。その現象自体はミステリアスなものであるが、あまり実用性がないように思えたのだ。
三人寄れば文殊の知恵――と言う言葉があるわけだが、まさしくその通りだと思う。ざっと通しで再現映像を見ている段階では、どの部分が重要なのか分からないから、どこに注目していいのか分からない。もちろん、誰が何を言ったのか――などと言うことを一言一句記憶しているわけではない。だから、記憶媒体という意味合いで、やはり1人よりも2人、2人より3人のほうがいいわけだ。事実、その辺りの記憶に関しては、九十九よりも眠夢のほうが強く記憶していたようだ。
「確か【A】達が首吊りを発見してから、フロントを経由して現場に到着したのが、長く見積もって1分程度。もし、何かしらの理由で死体が消えたのであれば、このわずか1分の間に死体が消えたことになる。しかも、それからは廊下に【A】達がずっといたんだ。死体を下ろして、どこかに隠して――そこまでの工程で考えても、明らかに時間が足りない」
九十九だけに主導権を握らせまいと必死なのであろう。議論から置いていかれぬようにと長谷川が口を挟む。ひとつ前の問題までは脇役でしかなかった男だったのに。まぁ、長谷川が九十九のことをどう思っているにしろ、議論が停滞してしまうよりかはマシだ。
「もっと正確に言えば、【A】達が廊下を折れ曲がり、フロント前を駆け抜けた時――つまり、部屋の窓が死角となった間に、何かしらが起きたと思われる。ほんの1分も満たない間にな」
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「そんなこと――可能なのかな?」
凛がぽつりと漏らした。ただ、この時点で九十九には引っかかる点があった。わずか1分程度の間に消えてしまった首吊り死体。その現象自体はミステリアスなものであるが、あまり実用性がないように思えたのだ。
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