上 下
299 / 506
第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】

56

しおりを挟む
 現状、生き残っている面子は男が2人、女が4人だ。それぞれの年齢をはっきりと確認したわけではないが、まず眠夢は間違いなく10代である。アカリと凛は――30代として見るには少し幼く見えるから、まず20代と考えてもいいだろう。そして、柚木が大きく見積もって30代といったところだ。しかしながら、女性陣に関しては、誰が犯人でもおかしくない。すなわち、登場人物と照らし合わせても、犯人から除外できる人間はいない。

 一方、九十九は自分自身のことだから当然ながら知っているが、男性陣に於いては九十九が20代、そして第1問目の解答者入場の際に藤木が言っていたが、長谷川は30代だということが分かっている。ならば――やはり長谷川は犯人から除外されるだろう。

「は? なんでだ?」

 問うてきたのは他でもない長谷川自身だった。自分が犯人から外れるということで、どうやら改めて主導権を握ろうとしているらしい。

「だから、まだ詳しくは言えねぇ。ただ、あえて言うなら、【甲】【乙】【丙】は全員が女だってことだ。まだ不確定な要素が多いから断定はしない。少しは自分の頭で考えろ。とにかく、いつもの手段はあまり頼りにならないってことだな」

 まだ九十九の頭の中でも考えが綺麗にまとまっておらず、発言する言葉の内容も、正直なところ気になった点をかいつまんで繋ぎ合わせているだけだ。まだ他にも不審な点はあるのだが、それらも断片的にしか見えていないものが多く、ひとつの形になるまでは、まだ何度も推察を積み重ねなければならないだろう。

「むしろ、これまで年齢や立場で犯人をある程度絞れたのは、それなりに難易度を調整するためだったのかもねぇ。クイズが進むにつれて、これまでのやり方が通用しなくなった感じなんじゃないかなぁ」

 元アイドルなんてのは、基本的に頭が悪いという偏見を持っていたが、筋道をしっかりと理解して口を開く凛のおかげで、その偏見はやや薄れていた。まぁ、芸能界には計算高い人間も多いだろうし、あえて馬鹿のふりをしている人間もいるのだろう。もしかすると、凛もその類いなのかもしれない。九十九は小さく頷く。

「まぁ、最初のほうは簡単な問題から――ってのは、クイズ番組のセオリーだろうしな。犯人の絞り込みが難しい以上、これまで以上に事件の真相をしっかりと突き止めなきゃならないってことだ。しかも、今回はシンキングタイムまでの時間も短かった。様々な面から難易度が上がってるもんだと考えたほうがいいだろうな」
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない

文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。 使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。 優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。 婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。 「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。 優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。 父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。 嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの? 優月は父親をも信頼できなくなる。 婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

処理中です...