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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】
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難しく考える必要はない。残りの選択肢の中から、再現映像では触れられていない情報を選べばいいだけ。証言を含む情報も必要ではあろうが、しかし全く再現映像で触れられていないのは、間違いなく【鑑識官の見解】である。この場面ならば、誰がどう見ても【鑑識官の見解】を選ぶのが正解。しかし柚木の口から出たのは――。
「あの【乙の証言】でお願いします」
よりによって【乙の証言】だった。再現映像からも分かることであるが、【乙】はエントランスで【A】達と会った際、随分と酩酊していた。察するに、ホテルの近くに酒を提供する店があり、そこで飲んできたのであろう。つまり、例の騒ぎがあった時間帯、【乙】はホテルの外にいた可能性が高い。よって、ホテルのいた【丙】と【ホテルマン】の証言よりも、事件に対する証言力が弱い可能性が高い。それなのに、どうして柚木はそんな証言を選んだのか。
考えられる可能性はいくつかある。もっとも有力なのは、疑心暗鬼に耐えきれずに、柚木が勝手に番組をドロップアウトしてしまっている可能性。誰も疑いたくない彼女は、当然ながら犯人を探すという趣旨のクイズ番組にも参加したくない。事実、時間になっても柚木だけはスタジオに姿を現さなかった。このクイズ番組そのものに嫌悪感のようなものを抱いていることは間違いない。いわば、この選択自体も、彼女からすればどれでも構わないわけだ。
次の可能性は、どうしていいのか分からずに脳内でパニックに陥っている可能性。これまでの彼女を見てきた限り、その可能性も充分に考えられた。しっかり考えようとしているが、まるで考えがまとまらず、焦れば焦るほど周りが見えなくなってしまう。そんな状況下に彼女がいることも否定はできないだろう。
もうひとつ、あまり考えたくはない可能性がある。それは――柚木こそが犯人であり、情報をこちらに与えないようにするため、あえて事件当時に外に行っていたであろう【乙の証言】を選んだというパターン。
彼女の取った行動を、ここまで深く疑ってしまう辺り、九十九自身も気づかぬうちに、疑心暗鬼という底なし沼に足を踏み入れてしまっているのかもしれない。
終わりの見えないクイズ番組。そして、解答者の中に混じっている犯人。挙げ句の果てに、このクイズ番組を企てた黒幕までもが潜んでいる。この状況下で、人を疑わぬようにしろというほうが無理なのかもしれない。
「はい、九十九さんと伊良部さんは解答席へと戻っていただいて結構でーす」
九十九と柚木が選択を終えると、解答席へと戻るように促してくる藤木。これならば、わざわざ前に出てくる必要などなかったのでないだろうか。
「あの【乙の証言】でお願いします」
よりによって【乙の証言】だった。再現映像からも分かることであるが、【乙】はエントランスで【A】達と会った際、随分と酩酊していた。察するに、ホテルの近くに酒を提供する店があり、そこで飲んできたのであろう。つまり、例の騒ぎがあった時間帯、【乙】はホテルの外にいた可能性が高い。よって、ホテルのいた【丙】と【ホテルマン】の証言よりも、事件に対する証言力が弱い可能性が高い。それなのに、どうして柚木はそんな証言を選んだのか。
考えられる可能性はいくつかある。もっとも有力なのは、疑心暗鬼に耐えきれずに、柚木が勝手に番組をドロップアウトしてしまっている可能性。誰も疑いたくない彼女は、当然ながら犯人を探すという趣旨のクイズ番組にも参加したくない。事実、時間になっても柚木だけはスタジオに姿を現さなかった。このクイズ番組そのものに嫌悪感のようなものを抱いていることは間違いない。いわば、この選択自体も、彼女からすればどれでも構わないわけだ。
次の可能性は、どうしていいのか分からずに脳内でパニックに陥っている可能性。これまでの彼女を見てきた限り、その可能性も充分に考えられた。しっかり考えようとしているが、まるで考えがまとまらず、焦れば焦るほど周りが見えなくなってしまう。そんな状況下に彼女がいることも否定はできないだろう。
もうひとつ、あまり考えたくはない可能性がある。それは――柚木こそが犯人であり、情報をこちらに与えないようにするため、あえて事件当時に外に行っていたであろう【乙の証言】を選んだというパターン。
彼女の取った行動を、ここまで深く疑ってしまう辺り、九十九自身も気づかぬうちに、疑心暗鬼という底なし沼に足を踏み入れてしまっているのかもしれない。
終わりの見えないクイズ番組。そして、解答者の中に混じっている犯人。挙げ句の果てに、このクイズ番組を企てた黒幕までもが潜んでいる。この状況下で、人を疑わぬようにしろというほうが無理なのかもしれない。
「はい、九十九さんと伊良部さんは解答席へと戻っていただいて結構でーす」
九十九と柚木が選択を終えると、解答席へと戻るように促してくる藤木。これならば、わざわざ前に出てくる必要などなかったのでないだろうか。
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