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第3問 過去は明日と同じ夢を見るか【出題編】
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『自動販売機はフロントの脇に2台置いてありました。1台はごくごく普通の飲料を販売するもの。もう1台はアルコールを取り扱うものであり、アルコールの自動販売機のほうは電源そのものが入っていないようでした』
ナレーションに導かれるようにして、自動販売機で飲み物を購入する【B】。やはり気まずいのであろうか。なんとなく【A】と【C】がフロントのほうから目を背けているように見える。【B】が大根役者なだけに、このような【A】と【C】の細かい仕草がやけに目立って見えた。
『せっかくだから2人にもおごってしんぜよう。好きなものを選ぶが良い』
女子が仲の良い男子に対して、ややふざけて見せる……そんな場面なのであろうが、やはり【B】が棒読みのせいで、可愛らしさのかけらもあったものではない。むしろ、台詞が砕けた表現になっている分、なおさらに棒読みが際立つ。
『お、マジかよ。ラッキー』
『じゃあ、お言葉に甘えて』
自動販売機にお金を入れると、2人にその場を譲る【B】。そのご厚意にあずかり、それぞれ飲み物を購入する【A】と【C】。飲み物が自動販売機から出てくる音と、釣り銭の硬貨が戻ってくる音が、妙にフロントには響いた。
『さて、本当にそろそろ寝ないとやばいぞ。部屋に戻ろうぜ』
おごってもらったペットボトル飲料を片手に口を開く【A】。その言葉がスイッチであったかのごとく【B】があくびをした。
『こりゃ、明日の朝は寝不足かなぁ』
正確な時刻は不明であるが、かなり遅い時間であることが伺える。真夜中に【A】と【C】が見たのは悪夢だったのか。いいや、これがクイズの問題として出題されるということは、必ず答えがあるということだ。つまり、【A】達が目撃したものも、明確なロジックがあって消えたということになる。
『お、あんた達。こんな時間まで何やってんのー? もう寝る時間でしょー?』
部屋に戻ろうとしていた3人の背中から、実に陽気で上機嫌そうな声が飛んできた。照らし合わせたかのように3人が振り返ると、そこには長身の綺麗な女性がいた。やや足取りは覚束ないし、顔は真っ赤である。テロップで【乙】という一文字が入った。もし首を吊っていたのが【甲】だとすれば、これで登場人物は全て登場したことになる。
【A】【B】【C】【乙】【丙】――殺害されるのが【甲】なのだから、犯人はこの5人の中にいることになるだろう。事実を整理しながら映像のほうもしっかりとチェックする九十九。上機嫌らしい【乙】は、3人のところへとやってくると、完全に緩みきった笑みを浮かべながら口を開いた。酔っ払い――というやつなのだろう。
ナレーションに導かれるようにして、自動販売機で飲み物を購入する【B】。やはり気まずいのであろうか。なんとなく【A】と【C】がフロントのほうから目を背けているように見える。【B】が大根役者なだけに、このような【A】と【C】の細かい仕草がやけに目立って見えた。
『せっかくだから2人にもおごってしんぜよう。好きなものを選ぶが良い』
女子が仲の良い男子に対して、ややふざけて見せる……そんな場面なのであろうが、やはり【B】が棒読みのせいで、可愛らしさのかけらもあったものではない。むしろ、台詞が砕けた表現になっている分、なおさらに棒読みが際立つ。
『お、マジかよ。ラッキー』
『じゃあ、お言葉に甘えて』
自動販売機にお金を入れると、2人にその場を譲る【B】。そのご厚意にあずかり、それぞれ飲み物を購入する【A】と【C】。飲み物が自動販売機から出てくる音と、釣り銭の硬貨が戻ってくる音が、妙にフロントには響いた。
『さて、本当にそろそろ寝ないとやばいぞ。部屋に戻ろうぜ』
おごってもらったペットボトル飲料を片手に口を開く【A】。その言葉がスイッチであったかのごとく【B】があくびをした。
『こりゃ、明日の朝は寝不足かなぁ』
正確な時刻は不明であるが、かなり遅い時間であることが伺える。真夜中に【A】と【C】が見たのは悪夢だったのか。いいや、これがクイズの問題として出題されるということは、必ず答えがあるということだ。つまり、【A】達が目撃したものも、明確なロジックがあって消えたということになる。
『お、あんた達。こんな時間まで何やってんのー? もう寝る時間でしょー?』
部屋に戻ろうとしていた3人の背中から、実に陽気で上機嫌そうな声が飛んできた。照らし合わせたかのように3人が振り返ると、そこには長身の綺麗な女性がいた。やや足取りは覚束ないし、顔は真っ赤である。テロップで【乙】という一文字が入った。もし首を吊っていたのが【甲】だとすれば、これで登場人物は全て登場したことになる。
【A】【B】【C】【乙】【丙】――殺害されるのが【甲】なのだから、犯人はこの5人の中にいることになるだろう。事実を整理しながら映像のほうもしっかりとチェックする九十九。上機嫌らしい【乙】は、3人のところへとやってくると、完全に緩みきった笑みを浮かべながら口を開いた。酔っ払い――というやつなのだろう。
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